「扶養」という言葉には、実は2つの意味があります。ひとつは税金(所得税・住民税)の扶養、もうひとつは社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養です。この2つは、対象も基準額もまったく別の制度なのに、同じ「扶養」「年収の壁」という言葉で語られるため、非常に混同されやすくなっています。123万円・160万円は税金の話、106万円・130万円は社会保険の話、というように、別々に理解する必要があります。
さらに、社会保険の扶養については、2025年・2026年と大きな制度改正が続いており、有名な「106万円の壁」も撤廃が決まっています。この記事では、税法上の扶養と社会保険上の扶養の違いを、国税庁・厚生労働省などの情報をもとに、最新の改正動向も含めてわかりやすく解説します。
- 扶養には「税の扶養」と「社会保険の扶養」の2種類があり、別制度
- 税の扶養は所得税・住民税の控除。社会保険の扶養は保険料負担の有無
- 税の壁は123万円・160万円など、社会保険の壁は106万円・130万円
- 手取りへの影響が大きいのは、保険料負担が生じる社会保険の壁
- 106万円の壁(賃金要件)は2026年10月に撤廃予定。週20時間が主基準に
扶養には2種類ある
まず、扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあることを押さえましょう。両者は管轄する制度も、判定の基準も、影響する内容もまったく異なります。
| 項目 | 税法上の扶養 | 社会保険上の扶養 |
|---|---|---|
| 関係する制度 | 所得税・住民税 | 健康保険・厚生年金 |
| 主な効果 | 扶養する人の税負担が軽くなる(所得控除) | 扶養される人が保険料を払わずに保障を受けられる |
| 主な収入基準 | 配偶者は123万円・160万円など | 原則130万円未満(106万円の場合も) |
| 超えたときの影響 | 控除が減る・なくなる(影響は比較的小さい) | 自分で保険料を負担(手取りへの影響が大きい) |
ポイントは、税の扶養は「扶養する人(夫など)の税金が安くなる」話で、社会保険の扶養は「扶養される人(妻など)が保険料を払うかどうか」の話だということです。誰にどんな影響が出るかが違います。
税法上の扶養とは
税法上の扶養とは、配偶者や親族を扶養している人が、所得税・住民税の所得控除(配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除)を受けられる仕組みです。扶養される側の収入が一定以下であれば、扶養する側の税金が安くなります。配偶者についての税の壁は、令和7年(2025年)の改正で次のようになりました。
| 税の壁(配偶者の給与年収) | 意味 |
|---|---|
| 123万円 | 配偶者控除を満額(38万円)受けられる上限(改正前は103万円) |
| 160万円 | 配偶者特別控除を満額(38万円)受けられる上限(改正前は150万円) |
| 約201.6万円 | 配偶者特別控除が受けられる上限 |
重要なのは、税の壁を超えても、いきなり大きく損をするわけではないことです。配偶者控除から配偶者特別控除へ段階的に移り、控除額がなだらかに減っていくため、収入が増えた分がそのまま無駄になることはありません。配偶者控除・配偶者特別控除の詳しい仕組みは、当サイトの関連記事で解説しています。
社会保険上の扶養とは
社会保険上の扶養とは、会社員などに扶養される家族が、自分で保険料を払わずに健康保険の保障を受けられ、配偶者の場合は国民年金の保険料も負担せずに済む(第3号被保険者)仕組みです。扶養される人の収入が基準を超えると、この扶養から外れ、自分で社会保険料を負担することになります。ここが手取りに直結する重要なポイントです。社会保険の壁には、130万円と106万円の2つがあります。
130万円の壁
社会保険の扶養に入れるのは、原則として年収130万円未満の場合です。年収が130万円以上になる見込みになると、配偶者などの扶養から外れ、自分で国民健康保険・国民年金、または勤務先の社会保険に加入することになります。これが「130万円の壁」です。扶養を外れると保険料の自己負担が生じるため、手取りが減ることがあります。
106万円の壁
130万円未満であっても、一定の条件を満たす人は、年収106万円(月額賃金8.8万円)を超えると勤務先の社会保険への加入義務が生じます。これが「106万円の壁」です。現行(2025年時点)では、次の5つの条件をすべて満たす場合に加入対象となります。
| 現行の社会保険加入の5条件(短時間労働者) |
|---|
| 週の所定労働時間が20時間以上 |
| 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円以上) |
| 2か月を超える雇用の見込みがある |
| 学生でない |
| 従業員51人以上の企業に勤務 |
【最新】106万円の壁は撤廃が決定
ここが最新の重要ポイントです。2025年6月に成立した年金制度改正法により、106万円の壁(月額賃金8.8万円以上という賃金要件)は撤廃が決定しました。施行は2026年10月が予定されています。撤廃後は、賃金の金額にかかわらず、週の所定労働時間20時間以上が社会保険加入の主たる基準になります。つまり「106万円の壁」から「週20時間の壁」へと、判定の軸が移ることになります。
さらに、企業規模要件(現行は従業員51人以上)も、2027年10月以降に段階的に縮小・撤廃される予定で、最終的には個人事業所(5人以上)にも適用が広がる方向です。これらの改正により、新たに約200万人が社会保険の加入対象になると見込まれています。社会保険の適用は今後数年かけて大きく拡大していきます。
税と社会保険の壁の全体像
税と社会保険の壁を、年収順に並べて整理すると、全体像がつかみやすくなります。
| 年収の壁 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|
| 106万円 | 社会保険 | 条件を満たすと社会保険に加入(2026年10月に賃金要件撤廃予定) |
| 123万円 | 税金 | 配偶者控除が満額受けられる上限・本人の所得税が発生し始める目安 |
| 130万円 | 社会保険 | 扶養から外れ、自分で社会保険料を負担 |
| 160万円 | 税金 | 配偶者特別控除が満額受けられる上限 |
| 約201.6万円 | 税金 | 配偶者特別控除が受けられる上限 |
こうして並べると、税金の壁(123万・160万・201.6万)と社会保険の壁(106万・130万)が交互に出てくることがわかります。手取りへの影響が大きいのは、保険料負担が始まる社会保険の壁(106万・130万)です。働き方を考えるときは、この2種類の壁を分けて、どちらに当たるのかを意識することが大切です。
まとめ
扶養には、税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があり、別の制度です。税の扶養は所得税・住民税の控除で、扶養する人の税金が軽くなるもの。社会保険の扶養は、扶養される人が保険料を負担せずに保障を受けられるものです。税の壁(123万・160万など)を超えても影響は段階的で比較的小さいのに対し、社会保険の壁(106万・130万)を超えると保険料の負担が生じ、手取りへの影響が大きくなります。さらに、106万円の壁の賃金要件は2026年10月に撤廃予定で、今後は週20時間が主たる基準になります。社会保険の適用は拡大が続くため、最新の制度を踏まえて働き方を考えることが重要です。配偶者控除・配偶者特別控除の詳細は、当サイトの関連記事もあわせてご確認ください。
- 扶養は税法上(所得税・住民税)と社会保険上(健康保険・厚生年金)の2種類で別制度
- 税の扶養は扶養する人の税負担が軽くなる。壁は123万・160万・約201.6万
- 社会保険の扶養は扶養される人の保険料負担の有無。壁は106万・130万
- 手取りへの影響が大きいのは社会保険の壁(保険料負担が生じる)
- 106万円の壁(賃金要件)は2026年10月撤廃予定。週20時間が主基準へ
※本記事は作成時点の法令・公表資料(所得税法、健康保険法、令和7年度税制改正関係資料、年金制度改正法(令和7年法律第33号)、厚生労働省の公表資料等)に基づいています。社会保険の適用拡大は段階的に施行され、内容や時期は今後変わる可能性があります。具体的な判断は最新の国税庁・厚生労働省・日本年金機構の情報の確認、または税理士・社会保険労務士へのご相談をおすすめします。


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