事業所税は申告納付方式の地方税です。賦課課税(自治体が税額を計算して通知する方式)ではなく、納税義務者自らが床面積・従業者数から税額を計算し、申告書を提出して納付しなければなりません。ここで実務上もっとも事故が多いのが「申告期限の延長制度がない」という一点です。法人税や法人事業税で申告期限を延長していても事業所税は延長されず、決算後2か月という固定の期限を見落とすと、自主的に納めても延滞金が、申告が遅れれば加算金が課されます。本記事では、4つの申告区分・期限・申告書の様式・電子申告・期限後申告等のペナルティまで、条文に沿って実務目線で解説します。
- 事業所税は申告納付方式。申告には納付申告・免税点以下申告・新設廃止申告・貸付等申告の4区分
- 申告期限は法人=事業年度終了後2か月以内、個人=翌年3月15日。期限延長制度はない(最重要)
- 免税点以下でも、前期に納税義務あり・床面積800㎡超・従業者80人超なら申告が必要
- 申告は窓口・郵送・eLTAX(電子申告)で可能。郵送は通信日付印の日に提出とみなす
- 過大納付は法定納期限から5年以内なら更正の請求(地方税法20条の9の3)で還付請求できる
- 加算金は不申告(5〜30%)・過少申告(10〜15%)・重加算(35〜40%)。令和6年から加重措置あり。延滞金は自主的な遅れでも発生
目次
- 事業所税の申告の種類
- 申告期限の詳細
- 申告書の入手方法と主な様式
- 申告方法(窓口・郵送・eLTAX)
- 申告先(所管都税事務所)
- 期限後申告・修正申告・更正の請求
- 加算金
- 延滞金
- 申告納付の流れ
- 想定Q&A集
- Q1. 法人税の申告期限を1か月延長しています。事業所税も延長されますか
- Q2. 税額がゼロ(免税点以下)なら、申告しなくてよいですか
- Q3. 申告期限が日曜日にあたる場合、いつまでに申告すればよいですか
- Q4. 申告を忘れていました。今から自主的に申告すると加算金はどうなりますか
- Q5. 申告は期限内にしましたが、納付が遅れました。ペナルティはありますか
- Q6. 過去の申告で床面積を多めに計上していました。納めすぎた分は戻りますか
- Q7. 期の途中で23区内に支店を新設しました。何か申告が必要ですか
- Q8. 貸ビルのオーナーですが、テナントに貸しているだけでも申告がいりますか
- Q9. 複数の政令指定都市に事業所があります。1か所にまとめて申告できますか
- Q10. 減免を受けたいのですが、納付申告とは別に手続きが必要ですか
- まとめ
事業所税の申告の種類
事業所税の申告には、以下の4種類があります。自社がどれに該当するかをまず確認します。
| 申告の種類 | 申告が必要な条件 | 申告期限 |
|---|---|---|
| 事業所税の納付申告 | 23区内の合計床面積が1,000㎡超または合計従業者数が100人超の場合(非課税部分除く) | 法人:事業年度終了後2か月以内/個人:翌年3月15日まで |
| 事業所税の免税点以下申告 | 前期に納税義務あり、または合計床面積800㎡超・合計従業者数80人超の場合 | 納付申告と同じ |
| 事業所等の新設・廃止申告 | 事業所等を新設または廃止した場合 | 新設・廃止日から1か月以内 |
| 事業所用家屋の貸付等申告 | 事業所用家屋の全部または一部を新たに貸し付けた場合(貸主が申告) | 貸付日から2か月以内(異動の場合は1か月以内) |
申告期限の詳細
法人の場合
法人の事業所税の申告納付期限は、事業年度終了の日から2か月以内です。法人税の申告期限と同じタイミングですが、前述のとおり延長制度はありません。
- 3月31日決算法人、申告期限は5月31日
- 9月30日決算法人、申告期限は11月30日
個人の場合
個人事業主の事業所税の申告納付期限は、翌年の3月15日までです。所得税の確定申告期限と同じ日です。
期限が休日等の場合
申告期限が土曜日・日曜日・祝日・12月29日〜1月3日に該当する場合は、これらの日の翌日が申告期限となります。
申告書の入手方法と主な様式
事業所税の申告書等は、所管都税事務所の窓口で配布されるほか、東京都主税局HPの「各種様式」から印刷できます。主な様式は次のとおりです。
| 様式 | 内容 |
|---|---|
| 事業所税の申告書(第44号様式) | 事業所税の本体申告書 |
| 事業所等明細書(第44号様式別表1) | 各事業所等の床面積・従業者数等の明細 |
| 非課税明細書(第44号様式別表2) | 非課税対象事業所等の明細 |
| 課税標準の特例明細書(第44号様式別表3) | 課税標準の特例適用事業所等の明細 |
| 共用部分の計算書(第44号様式別表4) | 共用部分の按分計算明細 |
| 事業所等新設・廃止申告書(第178号様式) | 事業所等の新設・廃止申告 |
| 事業所用家屋貸付等申告書(第179号様式) | 貸ビル所有者向けの申告書 |
| 事業所税減免申請書(第180号様式) | 減免を受けるための申請書 |
申告方法(窓口・郵送・eLTAX)
窓口提出
所管都税事務所の窓口で申告書等を提出できます。その場で形式的な不備の確認を受けられる利点があります。
郵送提出
所管都税事務所宛に郵送で提出可能です。前述のとおり、期限内申告は通信日付印の日に提出されたものとみなされます(発信主義)。
電子申告(eLTAX)
地方税ポータルシステム(eLTAX:エルタックス)を通じて、インターネットでの電子申告・申請、電子納税が可能です。複数自治体に事業所がある場合や、毎年継続して申告する場合は、eLTAXが効率的です。
- 都税事務所への往訪・郵送が不要
- 24時間365日いつでも申告可能
- 申告データが保存されるため過去の申告内容を簡単に確認できる
- 電子納税(ダイレクト納付・ペイジー等)で納付まで完結
- 複数の地方税の申告を一元管理できる
申告先(所管都税事務所)
東京都23区内の事業所税の事務は、複数の都税事務所が担当しています。申告の種類によって申告先が異なります。
| 申告の種類 | 申告先 |
|---|---|
| 事業所税の申告(納付・免税点以下) | 主たる事業所等の所在地を所管する都税事務所 |
| 事業所等の新設・廃止申告 | 新設または廃止した事業所等の所在地を所管する都税事務所 |
| 事業所用家屋の貸付等申告 | 事業所用家屋の所在地を所管する都税事務所 |
期限後申告・修正申告・更正の請求
期限後申告
申告期限を過ぎてしまった場合でも、自治体による決定の通知があるまでは申告納付できます。期限後申告には不申告加算金や延滞金が課されますが、調査による決定を予知せず自主的に申告した場合は不申告加算金が軽減され(原則15%が5%に)、さらに法定申告期限から1か月以内の自主申告で一定の要件を満たす場合は不申告加算金が課されないこともあります。気づいた時点で速やかに申告することが負担を最小化します。
修正申告
申告した税額に不足額がある場合は、遅滞なく修正申告を行い、増加した税額を納付する必要があります。自主的な修正申告でも、調査の事前通知後・決定を予知してされた場合は過少申告加算金の対象になり得ます。
更正の請求
申告した税額が過大であった場合は、法定納期限から5年以内に限って更正の請求ができます(地方税法20条の9の3)。床面積の二重計上、非課税・特例の適用漏れ、パートを誤って従業者に含めた等で過大納付に気づいたら、「事業所税更正請求書(第22号の4様式)」で還付を請求します。
加算金
期限後申告・修正申告、または隠ぺい・仮装による申告漏れがあった場合は、本税とは別に加算金が課されます。3種類あり、それぞれ課される場面と割合が異なります。
| 加算金の種類 | 課される条件 | 加算金額 |
|---|---|---|
| 不申告加算金 | 申告期限までに申告がない場合 | 原則15%(50万円超部分は20%、300万円超部分は30%)。自主申告なら5% |
| 過少申告加算金 | 期限内申告後、その税額に不足があった場合 | 不足税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
| 重加算金 | 課税標準等の計算の基礎を隠ぺい・仮装した場合 | 過少申告に代えて35%、不申告に代えて40% |
延滞金
納期限後に事業所税を納付する場合、納期限の翌日から納付の日までの期間に応じた延滞金が課されます。加算金と違い、申告は期限内でも納付だけ遅れた場合にも発生する点が重要です。
延滞金の割合(2段階)
| 期間 | 本則 | 特例(延滞金特例基準割合適用時) |
|---|---|---|
| 納期限の翌日から1か月を経過する日まで | 年7.3% | 延滞金特例基準割合+1%(上限7.3%) |
| その後、納付の日まで | 年14.6% | 延滞金特例基準割合+7.3%(上限14.6%) |
延滞金の計算方法
申告納付の流れ
事業所税の申告納付は、おおむね次の手順で進みます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 算定期間末日現在の事業所床面積・従業者給与総額・従業者数を集計する |
| 2 | 非課税部分を除いて免税点(1,000㎡・100人)を判定し、申告区分(納付申告/免税点以下申告)を決める |
| 3 | 課税標準を計算し、非課税・課税標準の特例を反映する。資産割(1㎡600円)+従業者割(給与総額0.25%)で税額を算出 |
| 4 | 減免対象があれば、申告納付期限までに減免申請書を提出する |
| 5 | 第44号様式と必要な別表を作成し、窓口・郵送・eLTAXのいずれかで申告する |
| 6 | 申告期限(法人=決算後2か月/個人=翌年3月15日)までに税額を納付する |
想定Q&A集
Q1. 法人税の申告期限を1か月延長しています。事業所税も延長されますか
延長されません。事業所税には申告期限の延長制度がなく、法人税・法人事業税で会計監査等を理由に申告期限を延長していても、事業所税は事業年度終了後2か月以内のままです。延長された法人税の申告に合わせて事業所税も後ろ倒しにしてしまうと、期限後申告として不申告加算金・延滞金の対象になります。事業所税の期限は独立して管理してください。
Q2. 税額がゼロ(免税点以下)なら、申告しなくてよいですか
必ずしもそうではありません。前事業年度に納税義務があった場合、または期末日の合計床面積が800㎡超もしくは合計従業者数が80人超の場合は、税額ゼロでも免税点以下申告書の提出が必要です。提出を怠ると、本来課税だったのに無申告だったケースと区別がつかず、後日の調査対象になり得ます。免税点(1,000㎡・100人)と申告要否の基準(800㎡・80人)がずれている点に注意してください。
Q3. 申告期限が日曜日にあたる場合、いつまでに申告すればよいですか
土日祝日・12月29日〜1月3日が期限にあたる場合は、その翌日(翌開庁日)が期限になります。たとえば5月31日が日曜なら6月1日が期限です。郵送の場合、期限内申告は通信日付印の日に提出されたものとみなされる(発信主義)ため、消印が期限内なら有効です。ただし期限後申告・修正申告は発信主義の対象外で、到達した日が提出日になります。
Q4. 申告を忘れていました。今から自主的に申告すると加算金はどうなりますか
調査による決定を予知せず自主的に期限後申告をすれば、不申告加算金は原則15%が5%に軽減されます。さらに、法定申告期限から1か月以内の自主申告で、期限内申告の意思があったと認められる一定の場合は不申告加算金が課されないこともあります。ただし延滞金は申告のタイミングと関係なく納期限の翌日から発生します。いずれにせよ、放置するほど不利になるため、気づいた時点で速やかに申告・納付するのが最善です。
Q5. 申告は期限内にしましたが、納付が遅れました。ペナルティはありますか
延滞金が課されます。延滞金は申告の有無・遅れと関係なく、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて発生します。納期限後1か月までは低い率(本則年7.3%、特例適用時はより低い)、それを超えると高い率(本則年14.6%)に上がります。加算金は申告に関するペナルティ、延滞金は納付に関するペナルティ、と性質が違う点を押さえておきましょう。
Q6. 過去の申告で床面積を多めに計上していました。納めすぎた分は戻りますか
法定納期限から5年以内であれば、更正の請求(地方税法20条の9の3)により還付を受けられます。過大納付は自治体が自動で気づいて返してくれるわけではなく、納税者自ら「事業所税更正請求書」を提出する必要があります。共用部分の按分誤り、非課税・特例の適用漏れ、パートを誤って従業者割に含めた等が典型例です。5年を過ぎると請求できなくなるため、気づいたら速やかに手続きしてください。
Q7. 期の途中で23区内に支店を新設しました。何か申告が必要ですか
事業所等を新設した場合は、新設日から1か月以内に「事業所等新設・廃止申告書(第178号様式)」の提出が必要です。これは年次の納付申告とは別の手続きで、廃止の場合も同様に1か月以内です。新設・廃止申告を出したうえで、事業年度末に通常の納付申告(または免税点以下申告)を行います。支店新設時は法人住民税等の異動届も必要になるため、あわせて手続きしてください。
Q8. 貸ビルのオーナーですが、テナントに貸しているだけでも申告がいりますか
事業所用家屋の全部または一部を新たに貸し付けた場合、貸主は「事業所用家屋貸付等申告書(第179号様式)」を貸付日から2か月以内(異動の場合は1か月以内)に提出する必要があります。これは、テナント(借主)が事業所税を正しく申告するための基礎情報を自治体に提供するものです。貸主自身に事業所税がかかるかとは別に、貸付の事実を申告する義務がある点に注意してください。
Q9. 複数の政令指定都市に事業所があります。1か所にまとめて申告できますか
できません。事業所税は指定都市等ごとに課税されるため、各市にそれぞれ申告・納付します。たとえば東京23区と大阪市に事業所があれば、東京都(都税事務所)と大阪市に別々に申告します。免税点判定も都市ごとに行います。eLTAXを使えば複数自治体への申告を一元的に処理できるため、多拠点の法人ほど電子申告が効率的です。
Q10. 減免を受けたいのですが、納付申告とは別に手続きが必要ですか
必要です。非課税・課税標準の特例は申告書(別表)に記載すれば適用されますが、減免は申告納付期限までに別途「事業所税減免申請書(第180号様式)」を提出しなければ適用されません。初年度は減免額を含めて申告納付し、申請書と減免事由を証する書類を添付します。申請を忘れて減免額を差し引いて納付すると、過少申告として加算金・延滞金の対象になり得ます。減免は申請主義である点に注意してください。
まとめ
- 事業所税の申告は納付申告・免税点以下申告・新設廃止申告・貸付等申告の4種類
- 申告期限:法人は事業年度終了後2か月以内、個人は翌年3月15日まで
- 申告期限の延長制度はない(法人税・法人事業税で延長していても適用されない)
- 免税点以下でも、前期に納税義務あり・床面積800㎡超・従業者80人超なら申告が必要
- 申告は窓口・郵送・eLTAXで可能。期限内申告の郵送は通信日付印の日に提出とみなす(発信主義)
- 過大納付は法定納期限から5年以内に更正の請求(地方税法20条の9の3)で還付請求できる
- 加算金:不申告(原則15%、50万円超20%・300万円超30%、自主申告5%)、過少申告(10〜15%)、重加算(35〜40%)。令和6年から常習無申告等に加重
- 延滞金:本則 納期限後1か月まで年7.3%・その後年14.6%(特例基準割合で実際は低い率)。申告期限内でも納付遅れで発生
- 遅れたら一日でも早く自主申告・納付するのが、加算金・延滞金を最小化する最善策
※本記事は2026年6月時点の法令・公表資料(地方税法20条の9の3ほか加算金・延滞金関係規定、令和6年度改正、総務省・東京都主税局「事業所税の手引」等)に基づく一般的な解説です。加算金・延滞金の割合や加重措置、様式番号は改正・自治体により異なる場合があります。実際の申告・納付にあたっては、所管の都税事務所等への確認と、必要に応じて顧問税理士へのご相談をおすすめします。
参考:東京都主税局「事業所税の手引」、総務省「地方税制度|加算金、延滞金、還付加算金」

