登録免許税とは|不動産・会社設立の税率と軽減措置を解説

地方税

家を買ったとき、相続で不動産を引き継いだとき、会社を設立したとき。登記をする場面では必ず登録免許税がかかります。ところが、この税は登記の種類ごとに税率も課税標準もバラバラで、不動産と会社ではまったく別の計算になります。しかも住宅取得や相続、会社設立には期限つきの軽減措置が数多く用意されており、要件を満たさないと本則の高い税率で計算されてしまいます。全体像をつかまないと、いくらかかるのかの見当すらつきにくい税です。

本記事では、まず登録免許税に共通する課税標準と計算のルールを押さえたうえで、不動産登記と会社登記のそれぞれについて税率をケース別に一覧化し、住宅取得の軽減措置・相続登記の免税・会社設立の負担と仕訳まで、実務で見積もれる水準で整理します。

この記事のポイント
  • 登録免許税は、登記を受けるときにかかる国税です。課税標準は不動産なら固定資産税評価額、会社なら資本金の額や件数です。
  • 不動産の主な税率は、所有権保存0.4%・売買による移転2.0%・相続による移転0.4%・抵当権設定0.4%です。
  • マイホーム取得では、土地の売買移転が1.5%、住宅用家屋の保存0.15%・移転0.3%・抵当権0.1%に軽減されます(要件と期限あり)。
  • 会社設立は資本金の額の0.7%で、株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円です。
  • 軽減措置は登記申請時に証明書を添付するのが原則で、後から取得しても差額の還付は受けられません。

登録免許税とは

登録免許税は、不動産や会社などの登記・登録、特許・免許・許可などを受けるときに課される国税です。根拠は登録免許税法で、登記の種類ごとに課税標準と税率が別表で定められています。登記という国の制度を利用することに対する負担であり、登記制度の運営費用を、その利益を受ける者に負担してもらうという考え方に基づいています。

納税義務者は、登記等を受ける者です。売買のように売主と買主が共同で登記を受ける場合は、両者が連帯して納付する義務を負いますが、実務上は登記によって利益を受ける買主が負担するのが一般的です。納付は、登記の申請時に、収入印紙を貼るか、現金納付の領収証書を貼るか、電子納付(ペイジー)で行います。商業登記ではクレジットカード納付は使えません。

課税標準と計算の基本ルール

税率の話に入る前に、すべての登記に共通する計算の型を押さえると、あとがスムーズです。登録免許税は、原則として「課税標準×税率」で計算します。課税標準は登記の種類で異なり、端数処理にも決まったルールがあります。

項目 内容
課税標準 不動産は固定資産税評価額、
抵当権は債権金額、会社は資本金の額や件数
端数処理 課税標準は1000円未満を切り捨て、
税額は100円未満を切り捨てる
最低額 計算した税額が1000円未満なら1000円
課税標準の確認 固定資産課税明細書の「価格」または
「評価額」で確認する(購入価格ではない)
不動産の課税標準は、実際の購入価格や時価ではなく、固定資産税評価額です。評価額は毎年市町村から届く固定資産課税明細書で確認でき、一般に売買価格より低くなります。抵当権設定登記だけは例外で、課税標準は不動産の評価額ではなく、借入額(債権金額)になります。

不動産登記の税率早見表

不動産登記の主な本則税率は次のとおりです。新築で最初にする登記が所有権保存、売買や相続で持ち主が変わる登記が所有権移転、住宅ローンを借りて担保を付ける登記が抵当権設定です。

登記の種類 課税標準 本則税率
所有権の保存登記(新築等) 評価額 0.4%
所有権の移転登記(売買) 評価額 2.0%
所有権の移転登記(相続) 評価額 0.4%
所有権の移転登記
(贈与・財産分与)
評価額 2.0%
抵当権の設定登記 債権金額 0.4%
抵当権の抹消登記 不動産の数 1個1000円

同じ移転登記でも、売買や贈与は2.0%、相続は0.4%と大きく差があります。抵当権の抹消だけは評価額と無関係で、不動産1個につき1000円の定額です。土地と建物は別々の不動産として、それぞれに課税されます。

マイホーム取得の軽減措置

住宅の取得では、租税特別措置法による軽減措置で税率が大きく下がります。土地の売買と、住宅用家屋(建物)とで、それぞれ別の軽減が用意されています。

対象 本則 軽減 期限
土地の
売買移転
2.0% 1.5% 令和11年
3月末
住宅用家屋の
保存
0.4% 0.15% 令和9年
3月末
住宅用家屋の
売買移転
2.0% 0.3% 令和9年
3月末
住宅取得資金の
抵当権設定
0.4% 0.1% 令和9年
3月末

住宅用家屋の軽減を受けるには、自己の居住用であること、登記簿上の床面積が50㎡以上であること、取得後1年以内に登記すること、中古住宅は昭和57年1月1日以後に建築されたものか新耐震基準に適合することなどの要件を満たし、市区町村長が発行する住宅用家屋証明書を添付する必要があります。さらに、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は、移転登記が0.1%から0.2%へと、一般住宅よりも手厚く軽減されます。住宅ローン控除とあわせて、取得時に確認すべき優遇です。

住宅用家屋の軽減は、売買または新築による取得が対象です。贈与や財産分与による移転には、この軽減は適用されません。また、登記のときに不動産取得税も別途かかります。取得時の税負担を見積もるときは、不動産取得税もあわせて押さえておくと安心です。

相続登記と免税措置

相続による所有権移転登記の税率は0.4%で、売買の2.0%より低く設定されています。加えて、相続登記には期限つきの免税措置があり、一定の場合は登録免許税が0になります。令和6年4月からは相続登記が義務化され、正当な理由なく期限内に登記しないと過料の対象となるため、免税措置を使える間に登記を済ませる意味は大きくなっています。

免税の対象 期限
相続で土地を取得した人が、その移転登記を
する前に死亡した場合の中間の相続登記
令和9年
3月末
評価額100万円以下の土地の
相続による移転登記・表題部所有者の相続人の保存登記
令和9年
3月末

会社・法人登記の税率早見表

会社の登記は、不動産とは課税標準の考え方が異なります。設立や増資は資本金の額に対する割合で、それ以外の変更登記は原則として件数ごとの定額です。主なものは次のとおりです。

登記の種類 税額
株式会社の設立 資本金の額の0.7%
(最低15万円)
合同会社の設立 資本金の額の0.7%
(最低6万円)
増資(資本金の増加) 増加額の0.7%
(最低3万円)
役員変更 1万円
(資本金1億円超は3万円)
本店移転 3万円
(管轄外への移転は6万円)
商号・目的の変更 3万円

株式会社の設立は資本金が約2143万円までなら計算上も最低額の15万円に収まるため、多くの会社は15万円です。市区町村が実施する特定創業支援等事業の証明書を設立登記の申請時に添付すると、設立の登録免許税が半額(株式会社7.5万円・合同会社3万円)になります。証明書の取得には数か月かかることがあるため、法人成りや創業を予定している段階で早めに準備するのが得策です。

会社設立の登録免許税の仕訳

会社設立のために支払った登録免許税は、会社の設立費用として創立費で処理するのが一般的です。創立費は繰延資産として計上し、任意のタイミングで償却できます。設立後の登記(増資や役員変更など)にかかる登録免許税は、租税公課などの費用として処理します。

場面 借方 貸方
設立登記の
登録免許税を納付
創立費 現金預金
設立後の変更登記の
登録免許税を納付
租税公課 現金預金
創立費は繰延資産のため、支出した事業年度に全額を償却することも、利益が出た年度にあわせて償却することもできます。設立初年度が赤字なら、あえて償却せず、黒字化した年度に償却して課税所得を圧縮する、といった調整が可能です。設立後の税務の全体像は、会社設立後にやるべき税務手続きもあわせて確認してください。

実務でありがちな落とし穴

落とし穴1:軽減の証明書を後から出しても還付されない
住宅用家屋の軽減や会社設立の半額は、登記の申請時に証明書を添付するのが原則です。登記が終わってから証明書を取得しても、払いすぎた差額の還付は受けられません。取得前に要件と必要書類を確認しておくことが不可欠です。
落とし穴2:贈与・財産分与に住宅の軽減はない
住宅用家屋の軽減が使えるのは、売買または新築による取得です。親から住宅の贈与を受けた場合や離婚の財産分与で移転する場合は、この軽減は適用されず、移転登記は本則の2.0%で計算されます。
落とし穴3:購入価格で計算してしまう
不動産の課税標準は購入価格ではなく固定資産税評価額です。売買価格で計算すると、実際より過大になります。評価額は固定資産課税明細書で確認します。
落とし穴4:会社設立の半額は直前では間に合わない
特定創業支援等事業による設立の半額は、市区町村の支援プログラムを受けて証明書を取得する必要があり、数か月かかることがあります。設立日の直前に思い立っても間に合わないため、創業の計画段階から準備します。

計算の手順(判断フロー)

手順 確認する内容
1 登記の種類を特定する
(不動産か会社か、保存・移転・抵当権・設立・変更)
2 課税標準を確認する
(不動産は評価額、抵当権は債権金額、会社は資本金や件数)
3 本則税率を確認する
4 軽減・免税の要件と期限を確認し、必要な証明書を準備する
5 端数処理して税額を計算し(最低1000円等)、申請時に納付する

想定問答

問1 課税標準は購入価格ですか、評価額ですか

結論として、不動産は固定資産税評価額です。理由は、登録免許税法が課税標準を固定資産課税台帳の価格としているためです。評価額は購入価格より低いのが通常なので、購入価格で計算すると過大になります。ただし抵当権設定登記だけは例外で、課税標準は評価額ではなく借入額(債権金額)です。

問2 中古住宅でも軽減は受けられますか

結論として、要件を満たせば中古でも受けられます。理由は、住宅用家屋の軽減が新築か中古かを問わず適用され得るためです。ただし中古の場合は、昭和57年1月1日以後に建築されたものか、新耐震基準に適合していることが必要です。古い住宅で耐震要件を満たさないと、軽減は使えず本則税率になります。

問3 贈与でもらった不動産に住宅の軽減は使えますか

結論として、使えません。理由は、住宅用家屋の軽減の対象が売買または新築による取得に限られているためです。贈与や離婚の財産分与による移転登記は、本則の2.0%で計算します。同じ家の移転でも、原因が売買か贈与かで税率が大きく変わる点に注意が必要です。

問4 相続登記はいくらかかりますか

結論として、原則は評価額の0.4%です。理由は、相続による移転登記の税率が0.4%と定められているためです。ただし、評価額100万円以下の土地や、登記前に相続人が死亡した中間の相続登記などは、令和9年3月末までの免税措置で0になることがあります。相続登記は義務化されているため、免税が使える間に済ませると有利です。

問5 軽減の証明書を後から出せば還付されますか

結論として、原則として還付されません。理由は、軽減が登記申請時の証明書添付を要件としているためです。登記後に住宅用家屋証明書や創業支援の証明書を取得しても、払いすぎた差額は戻りません。軽減を使うなら、登記の前に証明書を用意しておくことが絶対条件です。

問6 株式会社の設立はいくらですか

結論として、資本金の額の0.7%で、最低15万円です。理由は、計算した額が15万円に満たない場合は最低額の15万円になるためです。資本金が約2143万円までは一律15万円になるため、多くの中小企業は15万円です。合同会社は最低6万円と、株式会社より低く設定されています。

問7 会社設立の登録免許税を半額にできますか

結論として、特定創業支援等事業の証明書を使えば半額にできます。理由は、市区町村の創業支援を受けた人への優遇が設けられているためです。株式会社は7.5万円、合同会社は3万円になります。ただし証明書の取得には支援プログラムの受講が必要で数か月かかるため、設立直前では間に合いません。

問8 抵当権の抹消はいくらですか

結論として、不動産1個につき1000円です。理由は、抵当権の抹消登記が評価額に関係なく件数で課税されるためです。土地と建物のある住宅ローンを完済した場合は、土地1個と建物1個で合計2000円になります。評価額をもとに計算する登記とは考え方が違う点に注意が必要です。

問9 登録免許税は経費になりますか

結論として、なります。理由は、事業に関連して支払った登録免許税が租税公課などの費用として損金・必要経費になるためです。会社設立時のものは創立費として繰延資産に計上し、任意のタイミングで償却します。不動産を事業用に取得した場合の登録免許税も、取得価額に含めず費用処理できます。

問10 土地と建物は別々にかかりますか

結論として、別々にかかります。理由は、土地と建物がそれぞれ独立した不動産として登記されるためです。住宅を買うと、土地の移転登記、建物の移転登記(または保存登記)、住宅ローンの抵当権設定登記と、複数の登記が同時に発生します。それぞれに税率と軽減が適用されるため、合計額で見積もることが大切です。

まとめ
  • 登録免許税は登記を受けるときの国税で、課税標準は不動産なら固定資産税評価額、抵当権なら債権金額、会社なら資本金や件数です。
  • 不動産の本則は保存0.4%・売買移転2.0%・相続移転0.4%・抵当権0.4%で、抵当権抹消は1個1000円の定額です。
  • マイホーム取得は、土地売買1.5%・住宅用家屋の保存0.15%・移転0.3%・抵当権0.1%に軽減されます(要件と期限あり)。
  • 相続登記は0.4%で、評価額100万円以下の土地などは令和9年3月末まで免税です。相続登記は義務化されています。
  • 会社設立は0.7%で株式会社は最低15万円・合同会社は最低6万円、特定創業支援の証明で半額になります。設立分は創立費で処理します。

※本記事は令和8年7月時点の法令および公表資料(登録免許税法、租税特別措置法、国税庁・法務局・財務省の案内)に基づく一般的な解説です。軽減措置の要件・期限や会社登記の細目は改正により変わることがあります。実際の登記にあたっては、最新の情報および司法書士・税理士への確認をお願いします。

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