事業所税には、税負担を軽減する3つの制度があります。それぞれ仕組みも適用要件も異なるため、自社・自身に当てはまる制度を正しく把握することが重要です。本記事では、事業所税の非課税・課税標準の特例・減免について、それぞれの違いと適用要件を詳しく解説します。
非課税・課税標準の特例・減免の違い
事業所税の負担軽減制度には、以下の3つがあります。
| 制度 | 仕組み | 申請の要否 |
|---|---|---|
| 非課税 | 事業所税が課されない(課税標準・免税点判定からも除外) | 申請不要(申告書で適用) |
| 課税標準の特例 | 課税標準から一定割合を控除 | 申請不要(申告書で適用) |
| 減免 | 税額から一定割合を減免 | 減免申請書の提出が必要 |
3つの制度の関係:非課税は「そもそも課税対象外」、課税標準の特例は「課税標準を減らす」、減免は「税額そのものを減らす」という違いがあります。同じ施設に複数の制度が適用される場合は、原則として非課税→課税標準の特例→減免の順で適用されます。
非課税
非課税の2つの種類
事業所税の非課税には、「人的非課税」と「用途非課税」の2種類があります。
| 種類 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 人的非課税 | 事業を行う者の人格に着目した非課税 | 国・地方公共団体、公益法人等の収益事業以外の事業など |
| 用途非課税 | 施設の用途に着目した非課税 | 教育・社会福祉・医療施設など、特定の用途に供される事業所 |
用途非課税については、非課税対象として法令に列挙された用途以外に供される場合は非課税となりません。「学校だから非課税」「病院だから非課税」と短絡的に判断せず、具体的にどの用途部分が非課税対象になるかを確認する必要があります。
主な非課税対象施設
| 分野 | 主な非課税施設 |
|---|---|
| 教育 | 学校教育法上の学校(小・中・高・大学・専修学校等)の校舎、各種学校で文部科学大臣の指定を受けたもの等 |
| 社会福祉 | 社会福祉法に規定する社会福祉事業の用に供する施設、認可保育所、児童福祉施設等 |
| 医療・公衆衛生 | 病院・診療所のうち一定のもの(公的医療機関等)、看護師等の養成所等 |
| 交通・港湾 | 鉄道事業者・軌道経営者・路面電車などの一定施設、港湾施設等 |
| 公営事業 | 下水道事業、ガス事業、水道事業の用に供する施設等 |
| その他 | 寺院・神社の境内施設、公衆浴場(一般公衆浴場)、農業協同組合等の特定施設等 |
非課税対象施設の正確な範囲は、東京都主税局が公表している「非課税対象施設一覧表」をご確認ください。条件付きの非課税(「一定のもの」「政令で定めるもの」など)が多いため、具体的な該当性は所管都税事務所への確認をお勧めします。
非課税の適用判定
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 判定の基準日 | 課税標準の算定期間の末日の現況で判定 |
| 算定期間中途で廃止の場合 | 廃止の直前に行われていた事業により非課税判定 |
| 公益法人等の収益事業との併用 | 同一事業所内で収益事業と非収益事業を併せ行う場合、法人税法施行令6条の区分経理に基づき非課税部分を算定 |
課税標準の特例
課税標準の特例とは、特定の用途に供される事業所等について、課税標準から一定割合を控除する制度です。
課税標準の特例の仕組み
「課税標準の特例対象施設一覧表」に掲げる施設について、事業所床面積または従業者給与総額に所定の控除割合を乗じた額が課税標準から控除されます。
控除額 = 対象施設の事業所床面積(または給与総額)× 控除割合
主な課税標準の特例対象施設
| 対象施設 | 控除割合 |
|---|---|
| 特定の港湾運送業の用に供する施設 | 3/4 |
| 特定の倉庫業の用に供する施設 | 3/4 |
| 中小企業者の流通業務総合効率化事業の用に供する施設 | 1/2 |
| 特定の電気供給業の用に供する施設 | 1/2 |
| 物流総合効率化法の認定を受けた特定流通施設 | 1/2 |
| 中小企業の事業承継・引継ぎ支援センターが行う事業の用に供する施設 | 1/2 |
上記は主な例です。控除割合は施設の種類によって異なり、控除割合が3/4・1/2・1/4などのバリエーションがあります。詳細は東京都主税局「課税標準の特例対象施設一覧表」をご確認ください。
課税標準の特例の重複適用
「課税標準の特例対象施設一覧表」に掲げた特例規定のうち2以上の規定に重複して該当する場合は、以下の順序で適用されます。
| 適用順位 | 適用条項 |
|---|---|
| 適用順位1 | 法第701条の41第1項(特例対象施設一覧表の1番〜19番) |
| 適用順位2 | 法第701条の41第2項(特例対象施設一覧表の20番) |
適用順位1の規定を適用後の課税標準について、適用順位2の規定が適用されます。また、法第701条の41第1項の表各号の重複適用は行いません。
減免
減免とは、東京都の場合、知事が必要と認める者に限り講じられる措置で、税額そのものから一定割合を減免する制度です。
減免の仕組み
「減免対象施設一覧表」に掲げる施設について、事業所床面積または従業者給与総額に減免割合および税率を乗じた税額が減免されます。
減免税額 = 対象施設の事業所床面積(または給与総額)× 減免割合 × 税率
主な減免対象施設
| 分野 | 主な減免対象 |
|---|---|
| 中小企業支援 | 一定の中小企業者に係る事業所等 |
| 生協・農協等 | 消費生活協同組合・農業協同組合等の特定事業所 |
| 公益法人 | 特定公益法人等の収益事業の用に供する事業所 |
| 災害等 | 災害等によって甚大な被害を受けた者の事業所 |
減免の申請手続き
減免を受けるためには、事業所税の申告納付期限までに「事業所税減免申請書」を提出する必要があります。
| 申請区分 | 手続き |
|---|---|
| 初めて減免申請 | 減免申請額を含めて申告納付し、減免申請書と減免事由を証する書類を添付 |
| 2回目以降(事由に異動なし) | 減免額を差し引いて申告納付可能(減免申請書の提出は引き続き必要) |
| 2回目以降(事由に異動あり) | 初めての場合と同様、減免申請額を含めて申告納付 |
申請を忘れると減免を受けられません。初年度に減免申請を行うことを忘れて減免額を差し引いた額で申告納付した場合は、減免の適用を受けられないため、税額不足として課税される可能性があります。
3制度共通の判定ルール
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 判定の基準日 | 課税標準の算定期間の末日の現況で判定 |
| 算定期間中途で廃止 | 廃止の直前に行われていた事業により判定 |
| 対象事業と非対象事業の併用 | 従業者給与総額は事業に従事した分量に応じて按分(明らかでない場合は均等とみなす) |
まとめ
この記事のポイント
- 事業所税の負担軽減制度には非課税・課税標準の特例・減免の3つがある
- 非課税:そもそも課税対象外(人的非課税・用途非課税)
- 課税標準の特例:課税標準から一定割合を控除(控除割合は施設により3/4・1/2・1/4など)
- 減免:税額そのものを減免(東京都では知事が必要と認める者に限定)
- 非課税・課税標準の特例は申請不要(申告書で適用)、減免は減免申請書の提出が必須
- 判定の基準日はいずれも算定期間末日の現況
- 用途非課税は法令に列挙された用途以外には適用されない
- 初めての減免申請時は減免額を含めて申告し、2回目以降(事由に異動なし)は減免額を差し引いて申告できる
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