事業所税のみなし共同事業を完全解説|兄弟会社などの特殊関係者の判定と免税点

地方税

事業所税には「みなし共同事業」という独特の制度があります。これは、親族や同族会社などの特殊関係者と同一家屋で事業を行う場合、それらの事業を共同事業とみなして取り扱う規定です。事業を分割して別法人で行うことにより税負担を不当に減少させることを防ぐための制度ですが、判定が複雑で実務上問題になりやすい論点です。本記事では、みなし共同事業の仕組み・特殊関係者の範囲・免税点判定・課税標準の算定方法を、計算例付きで詳しく解説します。

みなし共同事業とは

みなし共同事業とは、事業者が親族や同族会社などの特殊関係者を有しており、その事業者の事業と特殊関係者の事業が同一家屋で行われている場合、特殊関係者の事業を共同事業とみなす制度です(地方税法701条の32第2項)。

みなし共同事業の主な特徴
  • 特殊関係者を有する者と特殊関係者は連帯納税義務を負う
  • 免税点判定は両者の数値を合算して行う(事業分割による免税点逃れを防止)
  • 課税標準は各者単独で算定(共同事業のように損益分配の割合を乗じない)
みなし共同事業の趣旨:例えば資本関係のある法人を分割して、それぞれの床面積を1,000㎡以下にすれば資産割の課税を免れることができてしまいます。これを防ぐため、特殊関係者の事業所床面積を合算して免税点判定を行う仕組みになっています。

みなし共同事業の適用要件

みなし共同事業に該当するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

要件 内容
①特殊関係者の存在 事業者が親族や同族会社などの特殊関係者を有していること
②同一家屋での事業 事業者の事業と特殊関係者の事業が同一家屋で行われていること
③除外要件に該当しない 「意思を通じて行われていない」かつ「事業所税の負担を不当に減少させる結果にならない」のいずれかに該当しないこと

「同一家屋」の定義

同一家屋とは、原則として同一棟をいいます。別棟の建物は同一家屋とはしません。同一家屋で行われている場合とは、特殊関係者と特殊関係者を有する者、またはその他の特殊関係者の行う事業が同一家屋内で行われていることをいいます。

みなし共同事業の除外要件

以下の両方の要件を満たす場合は、例外として共同事業とはみなされません。

除外要件 具体例
①意思を通じて行われていない 同一家屋で事業を行うことについて意思の疎通がない(都市再開発事業等の公共事業の施行に伴う権利床の取得など)
②税負担を不当に減少させる結果にならない みなし共同事業の規定を適用した場合と適用しなかった場合とを比較して、結果的に税負担が減少しない場合
原則として、特殊関係者と特殊関係者を有する者が同一家屋で事業を行う場合は、意思を通じて行われているものと考えられます。除外要件に該当することを主張するには、客観的な根拠が必要です。

特殊関係者の範囲

特殊関係者には、以下の7つの区分があります(地方税法施行令56条の21第1項)。判定対象者ごとに、誰が特殊関係者になるかを確認する必要があります。

区分 種別 特殊関係者の内容
個人 判定対象者の配偶者・直系血族・兄弟姉妹
個人 ①以外の判定対象者の親族(六親等内血族・三親等内姻族)で、判定対象者と生計を一にするか、判定対象者から受ける財産で生計を維持しているもの
個人 ①②以外の判定対象者の使用人その他の個人で、判定対象者から受ける特別の財産により生計を維持しているもの
個人 判定対象者に特別の財産を提供してその生計を維持させている個人(①②除く)と、その者と①〜③のいずれかの関係がある個人
個人 判定対象者が同族会社の場合、その判定の基礎となった株主・社員である個人と、その者と①〜④の関係がある個人
法人 判定対象者を判定の基礎として同族会社に該当する会社(判定対象者の資本系列にある同族会社)
法人 判定対象者が同族会社の場合、その判定の基礎となった株主・社員等を判定の基礎として同族会社に該当する他の会社
同族会社とは、法人税法第2条第10号に規定する同族会社をいい、3人以下の株主等および特殊の関係のある者で、発行済株式または出資の総数または総額の50%超を有する場合の会社をいいます。

特殊関係者の判定基準日

区分 判定基準日
個人 個人に係る課税期間の末日
法人 事業年度の末日

みなし共同事業の免税点判定

みなし共同事業に該当する場合、特殊関係者を有する者の免税点判定は、共同事業とみなされた事業のすべてを自己が単独で行うものとして、当該事業に係る事業所床面積・従業者数と、自己の事業に係る他の事業所床面積・従業者数とを合算して行います(地方税法施行令56条の75第2項)。

特殊関係者を有する者の免税点判定 = 自己の事業所床面積(または従業者数)+ 特殊関係者の事業所床面積(または従業者数)

みなし共同事業の課税標準の算定

共同事業とみなされる事業に係る課税標準の算定は、特殊関係者が単独で事業を行うとみなされるため、特殊関係者を有する者および特殊関係者ともに、その共同事業について損益分配の割合を乗じることはせず、自己の事業のみに係る課税標準を算定します(地方税法施行令56条の51第2項)。

みなし共同事業と通常の共同事業の違い:通常の共同事業では損益分配の割合に応じて課税標準を按分しますが、みなし共同事業では各者が単独で事業を行ったものとして各々単独に課税標準を算定します。

みなし共同事業の計算例

例1:同一家屋にのみ事業所等がある場合

前提条件(A法人とB法人が同一家屋で事業)
法人 事業所床面積 従業者数 給与総額
A法人 600㎡ 90人 3億円
B法人(A法人の特殊関係者) 500㎡ 15人 1億円
判定対象 免税点判定 課税標準
A法人 資産割:600㎡+500㎡=1,100㎡>1,000㎡ 資産割:600㎡
従業者割:90人+15人=105人>100人 従業者割:3億円
B法人 資産割:500㎡≦1,000㎡(免税点以下)
従業者割:15人≦100人(免税点以下)
A法人はみなし共同事業の規定により免税点超となり、課税対象となります。一方B法人は単独で見ると免税点以下のため、課税対象になりません。ただし、A法人とB法人の関係が「相互に」みなし共同事業に該当する場合は、両者ともに免税点判定で合算が必要です。

例2:同一家屋以外にも事業所等がある場合

前提条件(A・B法人が相互にみなし共同事業に該当)
区分 法人 床面積 従業者数 給与総額
同一家屋 A法人 400㎡ 50人 2億円
B法人 500㎡ 20人 1億円
別家屋 A法人 600㎡ 40人 1億円
判定対象 免税点判定 課税標準
A法人 資産割:400㎡+600㎡+(500㎡)=1,500㎡>1,000㎡ 資産割:1,000㎡(400+600)
従業者割:50人+40人+(20人)=110人>100人 従業者割:3億円
B法人 資産割:500㎡+(400㎡)=900㎡≦1,000㎡(免税点以下)
従業者割:20人+(50人)=70人≦100人(免税点以下)
免税点判定の合算範囲:A法人の判定では、A法人の全事業所(同一家屋の400㎡+別家屋の600㎡)と、特殊関係者であるB法人の同一家屋分(500㎡)を合算します。括弧内の数値は特殊関係者からの加算分です。

実務上の注意点

連帯納税義務に注意
みなし共同事業に該当する場合、特殊関係者と特殊関係者を有する者は連帯して納税義務を負います。一方が納付しない場合、他方が代わりに納付する責任を負うことになります。
同族会社判定は事業年度末日の状況で
特殊関係者の判定は事業年度末日の状況で行われるため、期中の株主構成変動は考慮されません。期末時点の株主構成・親族関係を確認しましょう。
「みなし共同事業に関する明細書」の提出
みなし共同事業に該当する場合は、申告書に「みなし共同事業に関する明細書」を添付して提出する必要があります。

まとめ

この記事のポイント
  • みなし共同事業は特殊関係者と同一家屋で事業を行う場合に適用される
  • 適用要件は①特殊関係者の存在 ②同一家屋での事業 ③除外要件に該当しないこと
  • 「同一家屋」とは原則として同一棟(別棟は同一家屋とはしない)
  • 特殊関係者の範囲は個人(配偶者・親族・使用人等)と法人(同族会社等)の7区分
  • 免税点判定は特殊関係者を有する者と特殊関係者の数値を合算して行う
  • 課税標準は各者単独で算定(損益分配の割合を乗じない)
  • 連帯納税義務を負うため、一方の納税不履行が他方に影響する
  • 事業を分割して別法人化することによる免税点逃れを防止する仕組み
事業所税シリーズ 記事一覧
  1. 事業所税とは?仕組みと概要
  2. 事業所税の納税義務者と課税対象
  3. 事業所税の課税標準(資産割・従業者割)の計算方法
  4. 事業所税の免税点判定と税額の算出方法
  5. 事業所税の非課税・課税標準の特例・減免
  6. 【今ここ】事業所税のみなし共同事業
  7. 事業所税の申告と納付の方法・期限・加算金

参考:東京都主税局「事業所税の手引」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/

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