輸入消費税とは?計算方法・関税との違い・仕入税額控除を徹底解説

消費税

消費税は、国内で行う取引だけでなく外国から貨物を輸入する取引にも課されます。国内で仕入れた商品には消費税がかかるのに、輸入した商品にはかからないとすると、輸入品のほうが有利になり国内産業との競争条件が不公平になるためです。この輸入時に課される消費税を実務では輸入消費税と呼びます。輸入消費税は、税関へ納める点、課税標準が対価の額ではなくCIF価格をもとに計算される点、そして課税事業者であれば仕入税額控除ができる点など、国内取引とは扱いが大きく異なります。本記事では、課税の対象・納税義務者・課税標準・税額計算・申告納付・仕入税額控除の要件までを、条文と国税庁タックスアンサーNo.6563に当てはめて整理します。

この記事のポイント
  • 課税対象は保税地域から引き取られる外国貨物。引き取る者は事業者か個人かを問わず納税義務者になる(消法4条2項・5条2項)。
  • 課税標準はCIF価格+関税額+個別消費税額の合計(消法28条4項)。無償で引き取る場合でも課税される。
  • 税率は国税7.8%と地方2.2%で合計10%(軽減税率は8%)。税関へ引取りの時までに申告納付する。
  • 課税事業者は輸入消費税を仕入税額控除できる。適格請求書は不要で、輸入許可通知書等の保存が要件。
  • 控除できるのは国税分(7.8%相当)のみ。地方消費税は控除計算に含めない。

輸入取引の消費税とは(課税の対象と趣旨)

消費税の課税対象は、国内取引と輸入取引の2つに分かれます。輸入取引の課税対象は保税地域から引き取られる外国貨物です(消法4条2項)。保税地域とは、輸入手続が済むまで外国貨物を置いておける税関の管理下の場所をいい、そこから貨物を引き取る(通関する)時点で消費税が課されます。

趣旨は冒頭のとおり、国内で流通する商品と輸入品の競争条件を公平に保つことにあります。したがって、事業として行う輸入かどうかにかかわらず、また対価を伴わない無償の引取りであっても、外国貨物の引取りには消費税が課されます。この点が、対価性のある取引だけを課税する国内取引との大きな違いです。

納税義務者と課税の範囲(引き取る者に課税)

輸入取引の納税義務者は、外国貨物を保税地域から引き取る者です(消法5条2項)。国内取引では課税事業者だけが納税義務者ですが、輸入取引では事業者か個人かを問わず、また免税事業者であっても、貨物を引き取れば納税義務を負います。海外の通販サイトで個人が商品を購入して輸入する場合でも、課税価格が一定額を超えれば輸入消費税がかかるのはこのためです。

ヒント:国内取引の消費税は売手が預かって納めますが、輸入消費税は買手(引き取る者)が自分で税関に納めるのが特徴です。免税事業者でも輸入時には納税が必要で、この負担は仕入税額控除ができないため、そのままコストになります。

課税標準はCIF価格+関税+個別消費税

輸入取引の課税標準は、関税課税価格(CIF価格)に、関税の額と、酒税など消費税以外の個別消費税の額を加算した合計額です(消法28条4項)。国内取引の課税標準が「取引の対価の額」であるのとは異なり、輸入では取引価格そのものではなく、CIF価格を土台に税金を積み上げた金額が課税標準になります。

CIF価格とは、貿易取引条件の一つで商品代金に仕向地までの運賃と保険料を加えた価格をいいます。本船渡し条件のFOB価格に運賃と保険料を上乗せしたものと考えると分かりやすいです。関税課税価格は関税定率法4条以下の規定に準じて計算します。

課税標準の構成要素 内容
CIF価格 商品代金に運賃と保険料を加えた価格
関税の額 CIF価格に関税率を乗じた金額
個別消費税の額 酒税やたばこ税などがある場合に加算

税額の計算方法と端数処理

輸入消費税の税率は、国内取引と同じく国税7.8%と地方消費税2.2%で合計10%(飲食料品などの軽減税率対象は国税6.24%と地方1.76%で合計8%)です。計算は端数処理を挟んで次の順序で行います。まず課税標準(CIF価格+関税額など)の千円未満を切り捨て、これに7.8%を乗じて国税分を求め百円未満を切り捨てます。地方消費税は、国税分に22を乗じて78で除し、百円未満を切り捨てます。

項目 計算(標準税率の例)
CIF価格 1,000,000円
関税(率10%の例) 100,000円
課税標準 1,100,000円
国税分(7.8%) 85,800円
地方分(22/78) 24,200円
輸入消費税の合計 110,000円

実際の税額は、通関時に税関から交付される輸入許可通知書に記載されます。会計処理や申告では、この通知書に記載された国税分と地方消費税分の金額を確認して計上します。

申告と納付・納税地(特例申告と納期限延長)

外国貨物を引き取ろうとする者は、原則として品名・数量・金額や関税・消費税額を記載した輸入(納税)申告書を税関長に提出し、貨物を引き取る時までに関税とともに消費税を納付します。国内取引の消費税が課税期間ごとにまとめて申告するのとは異なり、輸入消費税は引取りの都度、税関で申告納付するのが原則です。

特例申告と納期限の延長

あらかじめ税関長の承認を受けた特例輸入者や、認定通関業者に手続を委託した特例委託輸入者は、貨物を引き取った後にまとめて申告納付できます。また、税関長へ申請し担保を提供すれば、担保の額の範囲内で最長3か月の納期限延長が認められます。資金繰りの観点から、輸入が多い事業者はこれらの制度の活用を検討します。

注意点:納税地は税関:輸入消費税の納税地は、貨物を引き取る保税地域の所在地(所轄の税関)です。普段の消費税を申告している本店や事務所の所在地とは異なります。国内取引の申告先と混同しないよう注意してください。

輸入消費税の仕入税額控除(要件と仕訳)

課税事業者が事業として引き取った課税貨物の輸入消費税は、仕入税額控除の対象になります(消法30条1項)。国内の課税仕入れと同じく、預かった消費税から差し引けるため、最終的な負担は生じません。ここで実務上のポイントが2つあります。

控除の要件は輸入許可通知書の保存(インボイスは不要)

国内の課税仕入れでは適格請求書(インボイス)の保存が控除の要件ですが、輸入消費税では適格請求書は不要です。税関が発行する輸入許可通知書等を保存することで控除が認められます。売手である海外の事業者から適格請求書を受け取る必要はありません。国内の仕入税額控除の全体像はインボイス制度とはで確認できます。

控除できるのは国税分のみ

仕入税額控除の計算に用いるのは国税分(7.8%相当)です。地方消費税分は控除計算には含めません。税抜経理では、輸入消費税の全額(国税分と地方分の合計)を仮払消費税等として計上したうえで、申告上は国税分を控除対象仕入税額として扱います。

借方 金額 貸方 金額
仕入 1,000,000 買掛金 1,000,000
仮払消費税等 110,000 現金預金 110,000
仕入(関税) 100,000 現金預金 100,000

上の仮払消費税等110,000円のうち、仕入税額控除の対象となる国税分は85,800円です。なお関税は消費税ではないため控除できず、仕入原価や費用として処理します。

注意点:控除できるのは輸入申告の名義人:輸入消費税を仕入税額控除できるのは、輸入(納税)申告書の名義人です。通関を他社名義で行った場合など、自社が名義人でないときは、実質的に費用を負担していても控除できません。また簡易課税や2割特例を適用する期間は、みなし仕入率で計算するため輸入消費税を実額で上乗せ控除することはできません。

免税・少額輸入・個人輸入の取扱い

輸入貨物のうち一定のものは、関税の免除に併せて輸入消費税も免除されます。代表例が課税価格の合計額が1万円以下の少額輸入貨物の免税です。このほか、携帯品や引越荷物、慈善用の寄贈物品、再輸出を前提とする貨物などにも免税制度があります。免税を受けるには、輸入申告の際に必要事項を申告書に記載し、必要な場合は免税申請書を提出します。

個人が海外通販などで商品を輸入する場合、原則として海外小売価格の60%を課税価格として計算します。これは個人使用を前提とした簡便な取扱いで、事業者が販売目的で輸入する場合のCIF価格による計算とは異なります。

関税との違い・輸出免税との対比

輸入消費税は関税と混同されがちですが、根拠となる法律も、控除の可否も異なる別の税金です。関税はCIF価格を課税標準として関税定率法などに基づき課され、仕入税額控除の対象にはなりません。一方、輸入消費税は消費税法に基づき課され、課税事業者であれば控除できます。

項目 輸入消費税 関税
根拠法 消費税法 関税定率法等
課税標準 CIF+関税等 CIF価格
税率 10%(軽減8%) 品目ごと
仕入税額控除 課税事業者は可 不可(原価等)

また、輸入は輸出免税と対になる論点です。国外へ売る輸出取引は消費税が免除され、対応する仕入れの消費税は還付され得ます。詳しくは輸出免税と消費税の還付申告を徹底解説を参照してください。なお、輸入は貨物の引取りに課されるもので、国外事業者から受けるデジタルサービスなどの役務提供はリバースチャージ方式で処理する点も区別が必要です。

判断フロー(輸入取引の消費税)

輸入時の消費税の要否・金額・控除可否を、次の順序で判定します。

手順 判定と作業
1 保税地域から外国貨物を引き取るか。少額輸入(課税価格1万円以下)等の免税に当たらないか。
2 課税標準を算定。CIF価格に関税額と個別消費税額を加算する。
3 税額を計算。千円未満切捨後に7.8%(軽減6.24%)、地方分は国税分の22/78。
4 税関へ輸入(納税)申告し、引取りの時までに納付(特例申告や納期限延長の適用可)。
5 課税事業者かつ申告名義人なら、国税分を仕入税額控除。輸入許可通知書を保存する。

想定Q&A(輸入取引の消費税)

Q1 免税事業者や個人でも輸入消費税はかかりますか

結論として、かかります。輸入取引の納税義務者は貨物を引き取る者であり、事業者か個人か、課税事業者か免税事業者かを問わないためです(消法5条2項)。反対に、免税事業者や個人は仕入税額控除ができないため、その輸入消費税はそのままコストになります。

Q2 無償で受け取ったサンプル品でも課税されますか

結論として、課税されます。輸入取引は対価性のない無償の引取りであっても課税対象となるためです。反対に、国内取引では無償の取引は原則として課税対象外であり、この点が輸入取引との大きな違いです。

Q3 課税標準は仕入代金そのものですか

結論として、代金そのものではありません。課税標準はCIF価格に関税額と個別消費税額を加算した合計です(消法28条4項)。運賃や保険料、関税を含めた金額に消費税がかかるためです。反対に、国内取引の課税標準は取引の対価の額であり、税金を積み上げない点が異なります。

Q4 消費税の申告はどこにするのですか

結論として、税関に申告します。輸入消費税の納税地は貨物を引き取る保税地域の所在地であり、所轄の税関長へ輸入(納税)申告書を提出するためです。反対に、国内取引の消費税は本店や事務所の所在地を納税地として税務署に申告するため、申告先を取り違えないよう注意します。

Q5 いつ納付するのですか。延長はできますか

結論として、原則は貨物を引き取る時までに納付します。輸入消費税は引取りの都度、関税とともに納めるためです。反対に、特例輸入者や特例委託輸入者は引取り後の申告納付ができ、担保を提供すれば最長3か月の納期限延長も認められます。

Q6 輸入消費税は仕入税額控除できますか

結論として、課税事業者は控除できます。事業として引き取った課税貨物の輸入消費税は課税仕入れ等の税額に含まれるためです(消法30条1項)。反対に、免税事業者や、簡易課税・2割特例を適用する事業者は、実額での控除はできません。

Q7 控除には適格請求書(インボイス)が必要ですか

結論として、必要ありません。輸入消費税の控除要件は税関が発行する輸入許可通知書等の保存であり、海外の売手から適格請求書を受け取る必要はないためです。反対に、国内の課税仕入れでは適格請求書の保存が控除の要件となる点が異なります。

Q8 控除できるのは輸入消費税の全額ですか

結論として、全額ではなく国税分(7.8%相当)です。仕入税額控除の計算に用いるのは国税分で、地方消費税分は控除計算に含めないためです。反対に、税抜経理では会計上は国税分と地方分の合計を仮払消費税等として計上し、申告上は国税分を控除対象として扱います。

Q9 通関を他社名義で行った場合も控除できますか

結論として、控除できません。輸入消費税を控除できるのは輸入(納税)申告書の名義人であり、名義人でない者は実質的に負担していても控除の対象外だからです。反対に、自社が名義人であれば、輸入許可通知書を保存して控除できます。

Q10 少額の輸入でも消費税はかかりますか

結論として、課税価格の合計額が1万円以下の少額輸入貨物は原則免税です。関税の免除に併せて輸入消費税も免除される仕組みがあるためです。反対に、革製品など一部の品目はこの少額免税の対象から除かれており、1万円以下でも課税される場合があります。

Q11 関税と輸入消費税は同じものですか

結論として、別の税金です。関税は関税定率法などに基づきCIF価格を課税標準として課され、輸入消費税は消費税法に基づき課されるためです。反対に、輸入消費税は課税事業者なら仕入税額控除ができますが、関税は控除できず仕入原価や費用となります。

Q12 海外のクラウドサービスの利用も輸入取引ですか

結論として、輸入取引ではありません。輸入取引は外国貨物という物の引取りに課されるもので、国外事業者から受けるデジタルサービスなどの役務提供は電気通信利用役務の提供として別に扱われるためです。反対に、事業者向けの一定の役務提供はリバースチャージ方式で課税されるため、貨物の輸入とは区別して処理します。

まとめ
  • 輸入消費税は保税地域から外国貨物を引き取る者に課され、事業者・個人を問わず、無償でも課税される(消法4条2項・5条2項)。
  • 課税標準はCIF価格+関税額+個別消費税額で、国内取引の対価の額とは異なる(消法28条4項)。
  • 税率は国税7.8%と地方2.2%。千円未満切捨後に計算し、税関へ引取りの時までに申告納付する。
  • 課税事業者は国税分を仕入税額控除でき、要件は輸入許可通知書等の保存(適格請求書は不要)。
  • 控除は申告名義人のみ。関税は控除できず、輸出免税や越境役務のリバースチャージとは区別する。

出典

本記事は令和8年8月時点の法令等に基づく一般的な解説です。関税率や個別の適用は品目や事実関係により異なるため、具体的な判断は最新の国税庁・税関の情報や顧問税理士にご確認ください。

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