媒介者交付特例とは?代理交付との違い・要件・委託販売のインボイス交付を解説

消費税

インボイスは本来、課税資産の譲渡等を行う売り手が交付します。ところが委託販売では、実際に商品を売っているのは委託者(売り手)でも、買い手とやり取りするのは受託者(販売代行)です。このとき受託者が委託者に代わってインボイスを交付する方法が代理交付媒介者交付特例です。両者は似ていますが、インボイスに記載する登録番号が委託者のものか受託者のものかという決定的な違いがあります。媒介者交付特例なら、受託者は自己の名称と登録番号でインボイスを交付でき、委託者の情報を出さずに済みます。この記事では、消費税法57条の4・消令70の12とインボイスQ&Aを軸に、媒介者交付特例の2要件を記載例つきで示し、代理交付との違い、通知や写しの保存、複数委託者の取扱いまでを整理します。

この記事のポイント

  • 委託販売のインボイス交付には、代理交付と媒介者交付特例の2つの方法がある。
  • 媒介者交付特例では、受託者が自己の名称・登録番号でインボイスを交付できる(委託者の匿名性が高い)。
  • 媒介者交付特例の要件は2つ。委託者・受託者の双方が適格請求書発行事業者で、委託者が受託者へ事前に通知すること。
  • 代理交付は委託者の登録番号を記載する方法で、受託者は適格請求書発行事業者でなくてもよい。
  • 受託者は交付したインボイスの写しを委託者にも渡し、委託者・受託者の双方が保存する。

委託販売のインボイス交付は誰が行うか

委託販売では、購入者に対して課税資産の譲渡等を行っているのは委託者(売り手)です。したがって、本来はその委託者が購入者にインボイスを交付する義務を負います(消費税法57条の4)。しかし、実際に買い手と接しているのは受託者(販売代行)であり、委託者が個々の販売についてインボイスを交付するのは現実的でありません。

そこで、受託者が委託者に代わってインボイスを交付する方法として、代理交付媒介者交付特例の2つが認められています。どちらも受託者が購入者にインボイスを交付する点は同じですが、そのインボイスが「委託者名義」か「受託者名義」かが異なります。インボイス制度の全体像はインボイス制度とは?を参照してください。

媒介者交付特例の2つの要件

媒介者交付特例とは、媒介または取次ぎを行う受託者が、委託者の課税資産の譲渡等について、自己(受託者)の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書を、委託者に代わって購入者に交付できる制度です(消令70の12)。適用には次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。

要件 内容
要件1 委託者と受託者の双方が適格請求書発行事業者であること
要件2 委託者が受託者に対し、自己が適格請求書発行事業者である旨を取引前までに通知すること

要件2の通知は、個々の取引の都度である必要はなく、取引前までに行えば足ります。実務では、取引基本契約書に「委託者は適格請求書発行事業者であり、その登録番号は〇〇である」といった条項を盛り込む方法や、別途通知書を取り交わす方法が一般的です。委託者の登録番号が変わった場合や、登録を取りやめた場合には、受託者へ速やかに通知する必要があります。

注意点:委託者が免税事業者だと特例は使えない:媒介者交付特例は、委託者・受託者の双方が適格請求書発行事業者であることが前提です。委託者が免税事業者や未登録の場合、この特例は使えず、その委託者の販売分について受託者が自己の登録番号でインボイスを交付することはできません。委託者が登録を取りやめて発行事業者でなくなったときも同様で、受託者への通知を怠ると誤ったインボイスを交付してしまいます。

代理交付との違い

代理交付は、受託者が委託者を代理して、委託者の氏名・登録番号を記載した委託者名義のインボイスを交付する方法です。媒介者交付特例と混同されやすいので、違いを整理します。

項目 代理交付 媒介者交付特例
記載する登録番号 委託者のもの 受託者(自己)のもの
受託者の登録 不要 必要
委託者の登録 必要 必要
委託者の匿名性 低い(委託者名が出る) 高い(受託者名で交付)
根拠 交付義務の代理 消令70の12

言い切ると、受託者が自分の名前でインボイスを出したいなら媒介者交付特例、委託者の名前で出す(受託者は登録していない)なら代理交付です。多くの委託者の商品をまとめて扱うECサイトや店舗では、受託者名で一括交付できる媒介者交付特例が便利です。一方、受託者が適格請求書発行事業者でない場合は媒介者交付特例が使えないため、委託者名義の代理交付によることになります。

記載例と写しの保存

媒介者交付特例で受託者が交付するインボイスには、受託者自身の名称と登録番号を記載します。記載事項は通常の適格請求書と同じ6項目です。

請求書(媒介者交付特例)

受託者 ゼイムモール株式会社
登録番号 T9876543210987

ご購入者 御中 / 取引年月日 令和8年8月20日

品名 金額 消費税
ハンドメイド雑貨 10,000円 1,000円(10%)

記載するのは受託者の名称と登録番号。委託者の情報は表に出ない。

保存の流れは次のとおりです。受託者は購入者へ交付したインボイスの写しを保存するとともに、その写し(またはそれに代わる精算書等)を委託者にも交付します。委託者は受け取った写しを保存します。精算書等で代える場合は、委託者の売上税額の計算に必要な一定事項(税率ごとの対価の額・消費税額等など)を記載する必要があります。

当事者 保存するもの
受託者 購入者へ交付したインボイスの写し
委託者 受託者から交付された写し(又は精算書等)

複数の委託者がいる場合の取扱い

受託者が複数の委託者の商品を1人の購入者に販売する場合でも、媒介者交付特例により1枚のインボイスで交付できます(インボイスQ&A問49)。この場合の記載・計算は次のとおりです。

論点 取扱い
原則 委託者ごとに対価の額を記載し、消費税額等の端数処理も委託者ごとに行う
簡便法 1枚のインボイス単位で複数委託者の取引を一括記載し、端数処理を1回で行うことも差し支えない
免税事業者の混在 適格請求書発行事業者である委託者の分のみを区分して記載すればよい

ヒント:簡便法で複数委託者を一括して端数処理する場合、受託者が各委託者へ交付する写し(精算書等)の消費税額等の合計と、購入者に交付したインボイスの消費税額等が一致しないことがあります。その場合は、各委託者の税込対価の合計から消費税額等を計算するなど、合理的な方法で処理すれば差し支えないとされています。

活用場面と実務上の注意点

媒介者交付特例は、受託者が多数の委託者の商品を扱う次のような場面で活用されています。

活用場面 内容
ECサイト・モール 出品者(委託者)の商品を運営者(受託者)が販売代行し、運営者名で交付
農産物の委託販売 農協等の直売所で、生産者(委託者)に代わり直売所名で交付
不動産の家賃集金代行 オーナー(委託者)に代わり管理会社(受託者)名で交付

注意点:委託者にも写しの保存義務がある:媒介者交付特例では、受託者が交付したインボイスの写しを委託者にも交付し、委託者・受託者の双方が保存する必要があります。委託者が「受託者名で交付しているから自社は保存不要」と考えるのは誤りで、委託者は自らの売上げの根拠として写しを保存しなければなりません。精算書で代える場合も、税率ごとの対価・消費税額等の記載が必要です。

なお、住宅の貸付けなど非課税取引の家賃には、そもそもインボイスの交付義務がありません。管理会社が家賃集金代行で媒介者交付特例を使うのは、事業用建物の貸付けなど課税取引の部分です。

判断フロー(委託販売の交付方法)

順序 確認内容
1 委託者は適格請求書発行事業者か(免税・未登録なら特例も代理交付も不可)
2 受託者も適格請求書発行事業者か(登録ありなら媒介者交付特例が使える)
3 委託者が受託者へ事前に発行事業者である旨を通知しているか
4 受託者が未登録なら、委託者名義の代理交付による
5 交付後は写しを委託者に渡し、双方で保存する

想定Q&A(媒介者交付特例)

Q1. 媒介者交付特例とは何ですか

委託販売で、受託者が委託者に代わり、自己の名称と登録番号を記載したインボイスを購入者に交付できる制度です(消令70の12)。本来は委託者に交付義務がありますが、実際に買い手と接する受託者名で交付できるようにするものです。委託者の情報を出さずに済む点が特徴です。

Q2. 適用の要件は何ですか

2つです。①委託者と受託者の双方が適格請求書発行事業者であること、②委託者が受託者に対し、自己が適格請求書発行事業者である旨を取引前までに通知することです。通知は取引基本契約書に条項を入れる方法でも差し支えありません。

Q3. 代理交付とは何が違いますか

記載する登録番号が違います。媒介者交付特例は受託者(自己)の登録番号を記載し、代理交付は委託者の登録番号を記載します。媒介者交付特例は受託者も適格請求書発行事業者である必要がありますが、代理交付では受託者は登録していなくても構いません。

Q4. 受託者が免税事業者でも使えますか

使えません。媒介者交付特例は受託者が適格請求書発行事業者であることが要件です。受託者が免税事業者や未登録の場合は、委託者名義の代理交付によることになります。代理交付なら受託者の登録は不要です。

Q5. 委託者が免税事業者のときはどうなりますか

その委託者の販売分についてはインボイスを交付できません。委託者が適格請求書発行事業者でなければ、媒介者交付特例も代理交付も使えず、購入者は原則としてその仕入れについて仕入税額控除ができません(経過措置の適用は別途検討します)。

Q6. 通知は取引ごとに必要ですか

取引の都度である必要はなく、取引前までに行えば足ります。取引基本契約書に委託者が適格請求書発行事業者である旨と登録番号を記載しておく方法が一般的です。ただし、委託者が登録を取りやめた場合などは、受託者へ速やかに通知する必要があります。

Q7. 複数の委託者の商品を1枚のインボイスで出せますか

出せます。原則は委託者ごとに対価を記載し、消費税額等の端数処理も委託者ごとに行いますが、1枚のインボイス単位で複数委託者の取引を一括して記載し端数処理を1回で行うことも差し支えありません。免税事業者の委託者が混在する場合は、発行事業者である委託者の分のみを区分して記載します。

Q8. 委託者もインボイスを保存する必要がありますか

あります。受託者は交付したインボイスの写し(又は精算書等)を委託者に交付し、委託者・受託者の双方がこれを保存します。委託者は自らの売上げの根拠として保存が必要で、受託者名で交付しているから保存不要という理解は誤りです。

Q9. どんな事業で使われますか

受託者が多数の委託者の商品を扱う事業で活用されます。ECサイト・モールの販売代行、農協等の直売所での農産物の委託販売、不動産管理会社による家賃集金代行などが代表例です。いずれも受託者が自己の名称で一括してインボイスを交付できる利点があります。

Q10. 購入者が委託者からの再交付を求めたら応じられますか

応じられます。媒介者交付特例で受託者が交付した後でも、購入者が委託者に再交付を求めた場合、委託者が再交付することは可能です。ただし、同一の取引について重複して仕入税額控除はできず、控除は1回に限られます。金額は委託者が認識している額によります。

まとめ

  • 委託販売のインボイス交付には代理交付と媒介者交付特例の2方法があり、記載する登録番号が異なる。
  • 媒介者交付特例は受託者が自己の登録番号で交付でき、委託者の匿名性が高い。
  • 要件は2つ。委託者・受託者の双方が適格請求書発行事業者で、委託者が受託者へ事前通知すること。
  • 受託者が未登録なら委託者名義の代理交付による。委託者が免税事業者だといずれも使えない。
  • 受託者は写しを委託者にも交付し、委託者・受託者の双方が保存する。複数委託者は一括交付も可。

出典・参考(2026年8月時点)

※本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令・国税庁公表資料に基づく一般的な解説です。記載例は説明用に簡略化したもので、実際の様式や金額とは異なります。個別の判断にあたっては、必ず国税庁ホームページや税務署、顧問税理士にご確認ください。

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