控除対象外消費税の処理|繰延消費税額等の計算や仕訳を解説

所得税

消費税の経理処理で「税抜経理方式」を採用している事業者が、課税売上割合が低いなどの理由で仕入れにかかった消費税の全額を控除できなかった場合に生じるのが「控除対象外消費税額等」です。これは単なる消費税の論点にとどまらず、その控除できなかった消費税を法人税・所得税の計算上どのように損金(必要経費)に算入するかという、決算・申告実務でつまずきやすいポイントの一つです。特に、控除対象外消費税額等は「資産に係るもの」と「経費に係るもの」で取扱いが異なり、一定の要件に該当すると「繰延消費税額等」として資産計上し、5年かけて損金算入していく必要があります。本記事では、発生する仕組みから、税務上の取扱い、繰延消費税額等となる要件、計算方法・仕訳、実務上の注意点まで、国税庁の取扱い(No.6921)に基づいて正確に解説します。

この記事のポイント
  • 控除対象外消費税額等は、税抜経理方式で仕入税額控除しきれなかった仮払消費税等のこと(税込経理では発生しない)
  • 発生するのは、課税売上高5億円超、または課税売上割合95%未満のとき
  • 経費に係るものは全額その期の損金。資産に係るものは要件で取扱いが分かれる
  • 資産分でも、課税売上割合80%以上・棚卸資産・一の資産20万円未満のいずれかなら全額その期の損金
  • 3要件に該当しなければ繰延消費税額等として5年(60か月)償却。取得年度は計算額の2分の1が限度
  • 交際費の損金不算入額の計算に加算が必要。居住用賃貸建物・インボイス経過措置との関係にも注意

  1. 控除対象外消費税額等とは
  2. 控除対象外消費税額等が発生する仕組み
    1. 課税売上割合とは
  3. 控除対象外消費税額等の2つの区分
  4. 資産に係る控除対象外消費税額等の取扱い
    1. 処理方法の3つのパターン
    2. その事業年度に全額損金算入できる3要件
  5. 繰延消費税額等の計算方法
    1. 損金算入額の計算式(法人の場合)
    2. 必要経費算入額の計算式(個人の場合)
    3. なぜ5年で償却するのか
  6. 具体的な計算例と仕訳
    1. 損金算入限度額の計算
    2. 仕訳例
  7. 実務上の注意点
    1. 交際費の損金不算入額の計算に影響する
    2. 資産の取得価額に算入する方法も選べる
    3. インボイス制度導入後の経過措置との関係
  8. 想定Q&A集
    1. Q1. 税込経理にすれば控除対象外消費税の処理は不要になりますか
    2. Q2. 課税売上割合が95%以上なら控除対象外消費税は絶対に出ませんか
    3. Q3. 課税売上割合が80%以上なら、固定資産の控除対象外消費税も全額その期の損金ですか
    4. Q4. 「20万円未満」は控除対象外消費税の総額で見るのですか
    5. Q5. なぜ取得した年度だけ2分の1しか損金にできないのですか
    6. Q6. 繰延消費税額等を取得価額に算入するのと、5年償却するのはどちらが有利ですか
    7. Q7. 申告調整だけで損金算入できますか(損金経理は必須ですか)
    8. Q8. 交際費にかかる控除対象外消費税は、繰延の対象になりますか
    9. Q9. 簡易課税や2割特例を使っている場合も控除対象外消費税は出ますか
    10. Q10. 居住用賃貸建物の控除対象外消費税も5年償却ですか
  9. まとめ

控除対象外消費税額等とは

控除対象外消費税額等とは、税抜経理方式を採用している事業者において、仕入れなどにかかった消費税額等(仮払消費税等)のうち、仕入税額控除ができなかった部分の金額をいいます。「消費税額等」とは、国税である消費税と地方税である地方消費税を合わせた呼称です。

通常、課税事業者は仕入れにかかった消費税を売上げにかかった消費税から控除(仕入税額控除)できます。しかし、後述する一定の場合には仕入れにかかった消費税の全額を控除できず、控除しきれない部分が生じます。この控除しきれなかった仮払消費税等が「控除対象外消費税額等」です。

税込経理方式では発生しない

控除対象外消費税額等は、税抜経理方式を採用している場合にのみ発生します。税込経理方式では、消費税額は取引金額に含めて処理されるため、仮払消費税等を区分して認識しません。したがって、控除しきれない消費税という概念自体が生じず、消費税は資産の取得価額や経費の額に含まれて処理されます。

控除対象外消費税額等が発生する仕組み

控除対象外消費税額等は、仕入税額控除が制限される場合に発生します。具体的には、税抜経理方式を採用している事業者で、その課税期間において次のいずれかに該当する場合です。

条件 内容
課税売上高が5億円超 課税期間中の課税売上高が5億円を超える場合
課税売上割合が95%未満 課税期間中の課税売上割合が95%未満である場合

上記のいずれかに該当する場合、その課税期間の仕入税額控除は、課税仕入れ等にかかる消費税額の全額ではなく、課税売上げに対応する部分の金額のみとなります。これは、いわゆる「95%ルール」(課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上なら全額控除できる取扱い)の適用が外れるためです。その結果、課税売上げに対応しない部分の消費税が控除できず、控除対象外消費税額等として生じます。控除税額の計算(個別対応方式・一括比例配分方式)の詳細は個別対応方式と一括比例配分方式で解説しています。

課税売上割合とは

課税売上割合とは、その課税期間中の総売上高(課税売上高+非課税売上高)に占める課税売上高の割合をいいます。次の算式で計算します。

課税売上割合 = 課税売上高(税抜) ÷ {課税売上高(税抜)+ 非課税売上高}

※上記は理解しやすいよう簡略化した算式です。厳密には、分子・分母には輸出免税売上高や非課税資産の輸出等が含まれ、有価証券の譲渡は対価の額の5%を分母に算入するなど、細かい調整があります。

医療業(社会保険診療)、住宅の貸付け、土地の譲渡、利息を受け取る金融業など、非課税売上げが多い事業者は課税売上割合が低くなりやすく、控除対象外消費税額等が発生しやすい傾向にあります。

例外:全額控除できる事業者でも控除対象外消費税が生じる場合がある

原則として、課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上で仕入税額控除が全額できる事業者には控除対象外消費税額等は生じません。ただし例外があります。代表例が居住用賃貸建物です。一定の居住用賃貸建物は、課税売上割合にかかわらず取得時の仕入税額控除そのものが制限されるため、税抜経理方式を採用していれば、全額控除できる事業者であっても控除対象外消費税額等が生じます(その後の課税賃貸用への転用・譲渡による調整計算の対象とならない限り)。居住用賃貸建物の消費税の取扱いは論点が多いため、居住用賃貸建物の控除対象外消費税額等|仕入税額控除の制限と転用・譲渡の調整の記事で別途解説しています。

控除対象外消費税額等の2つの区分

控除対象外消費税額等は、その消費税が何にかかったものかによって、税務上の取扱いが大きく異なります。具体的には、「資産に係るもの」「経費に係るもの(資産に係らないもの)」の2つに区分されます。

区分 取扱い
資産に係るもの 一定の要件によって取扱いが分かれる(後述)。要件に該当しない場合は繰延消費税額等として5年償却
経費に係るもの(資産に係らないもの) その事業年度(その年分)の損金または必要経費に全額算入

経費に係る控除対象外消費税額等は、その事業年度(その年分)に全額を損金または必要経費に算入できるため、処理は比較的シンプルです。一方、資産に係る控除対象外消費税額等は、一定の要件によって全額損金算入できる場合と、繰延消費税額等として複数年にわたり償却する場合に分かれるため、注意が必要です。

「資産に係るもの」とは

資産に係る控除対象外消費税額等とは、棚卸資産・固定資産・繰延資産といった「資産の取得」にかかった課税仕入れ等のうち、控除できなかった消費税額等をいいます。例えば、建物・機械・車両・備品などの固定資産や、販売用の商品(棚卸資産)の取得にかかった消費税が該当します。

資産に係る控除対象外消費税額等の取扱い

資産に係る控除対象外消費税額等の処理方法は、国税庁の取扱い(No.6921)により、大きく3つに分かれます。

処理方法の3つのパターン

パターン 内容
①取得価額に算入 控除しきれなかった消費税額をその資産の取得価額に含め、以後の事業年度で減価償却費などとして損金算入する
②その期の損金に算入 後述の3要件のいずれかに該当する場合、損金経理を要件として、その事業年度の損金(所得税では全額必要経費)に算入する
③繰延消費税額等として資産計上 ①②に該当しない場合、繰延消費税額等として資産計上し、5年(60か月)かけて損金算入する

その事業年度に全額損金算入できる3要件

資産に係る控除対象外消費税額等であっても、次の3つの要件のいずれかに該当する場合は、繰延処理をせず、その事業年度の損金(その年分の必要経費)に全額算入できます。

要件 内容
その事業年度(その年分)の課税売上割合が80%以上であること
棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること
一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること

逆に言えば、これら3要件のいずれにも該当しない場合、すなわち「課税売上割合が80%未満」かつ「固定資産等(棚卸資産を除く)に係るもの」かつ「一の資産に係る金額が20万円以上」の場合に、繰延消費税額等として5年償却の対象となります。

「20万円未満」は資産ごとに判定

③の「20万円未満」は、一の資産(1つの資産)ごとに判定します。控除対象外消費税額等の合計額ではなく、個々の資産にかかる控除対象外消費税額等が20万円未満かどうかで判断する点に注意が必要です。例えば、ある固定資産にかかる控除対象外消費税が18万円であれば、課税売上割合が80%未満であっても、その事業年度の損金に算入できます。

繰延消費税額等の計算方法

前述の3要件に該当せず、繰延消費税額等として資産計上した場合は、次の方法によって損金の額(必要経費)に算入します。法人の場合の計算式は以下のとおりです。

損金算入額の計算式(法人の場合)

繰延消費税額等の損金算入限度額(法人)

【取得した事業年度】
損金算入限度額 = 繰延消費税額等 × (その事業年度の月数 ÷ 60) × 1/2

【翌事業年度以降】
損金算入限度額 = 繰延消費税額等 × (その事業年度の月数 ÷ 60)

繰延消費税額等を60(か月)で除し、その事業年度の月数を乗じて計算します。これは実質的に5年(60か月)で均等に償却することを意味します。ただし、取得した事業年度だけは、計算した金額の2分の1に相当する金額が損金算入限度額となる点に注意が必要です。

なお、いずれの事業年度も損金経理した金額のうち、上記の限度額に達するまでの金額が損金に算入されます。損金経理が要件となるため、申告調整のみでの損金算入はできません。確定申告書には損金算入に関する明細書の添付が必要です(法人税法施行令139条の5)。

なぜ取得年度は2分の1なのか

取得年度を2分の1とするのは、事業年度(年分)の途中で資産を取得することを想定した平準化の仕組みです。取得年度に1年分(12か月分)を計上すると過大になりやすいため、取得年度は半分にし、その分を最終年度に繰り延べることで、トータルで5年(60か月)分が均等に損金算入されるよう調整されています。

必要経費算入額の計算式(個人の場合)

個人事業主(所得税)の場合も、考え方は法人とほぼ同じです。繰延消費税額等を60で除し、月数を乗じて必要経費に算入します。法人との主な違いは、「事業年度の月数」ではなく「その年において事業所得等を生ずべき業務を行っていた期間の月数」を用いる点です。取得した年分が2分の1となる点は法人と同じです。

繰延消費税額等の必要経費算入額(個人)

【取得した年分】
必要経費算入額 = 繰延消費税額等 × (その年に業務を行っていた期間の月数 ÷ 60) × 1/2

【翌年分以降】
必要経費算入額 = 繰延消費税額等 × (その年に業務を行っていた期間の月数 ÷ 60)

法人と個人の計算の違い

法人は「その事業年度の月数」、個人は「その年において事業所得等を生ずべき業務を行っていた期間の月数」を用います。年の初めから1年を通じて事業を営んでいる個人であれば月数は12か月となり、計算結果は法人(事業年度12か月)と同じになります。取得年分を2分の1とする点は法人・個人で共通です。なお、法人は損金経理が要件ですが、個人は計算した金額を必要経費に算入します。

なぜ5年で償却するのか

繰延消費税額等を5年で償却するのは、税込経理方式とのバランスを取るためです。税込経理方式では、消費税は資産の取得価額に含まれ、その資産の耐用年数にわたって減価償却を通じて損金算入されます。一方、税抜経理方式で控除対象外消費税額等を一時に全額損金算入できてしまうと、税込経理方式より早期に損金算入できることになり、両者の課税のバランスが崩れます。そこで、税抜経理方式でも簡便的に5年と定めて償却することで、税込経理方式との均衡を図っています。

具体的な計算例と仕訳

具体的な数値を使って、繰延消費税額等の計算と仕訳を確認します。

設例

税抜経理方式を採用する3月決算法人(事業年度12か月)。課税売上割合70%(80%未満)。機械(固定資産)を取得し、その控除対象外消費税額等が60万円発生。一の資産にかかる控除対象外消費税が20万円以上であり、3要件のいずれにも該当しないため、繰延消費税額等として5年償却の対象となる。

損金算入限度額の計算

【取得年度(1年目)】
60万円 × (12か月 ÷ 60) × 1/2 = 6万円

【2年目〜5年目(各年)】
60万円 × (12か月 ÷ 60) = 12万円

【6年目(最終)】
残額 = 60万円 −(6万円 + 12万円 × 4年)= 6万円

このように、取得年度は2分の1の6万円、2年目以降は各12万円ずつ損金算入され、取得年度に半分にした分が最終年度(6年目)に6万円残ります。合計すると60万円(6万円+12万円×4年+6万円)が、足かけ6事業年度・実質5年(60か月)で損金算入されることになります。

なお、この設例を個人事業主(所得税)に置き換えても、年の初めから1年を通じて事業を営んでいれば月数は12か月となるため、計算結果は上記とまったく同じになります(取得年分6万円、2年目以降各12万円、最終年6万円を必要経費に算入)。「損金算入」を「必要経費算入」と読み替えれば、そのまま個人にも当てはまります。

仕訳例

控除対象外消費税額等60万円が発生し、繰延消費税額等として処理する場合の仕訳例です。決算時に控除対象外消費税額等を繰延消費税額等(資産)に振り替え、各事業年度で償却します。

場面 仕訳(借方/貸方)
①取得年度の決算時(振替) (借)繰延消費税額等 600,000 / (貸)仮払消費税等 600,000
②取得年度の償却(6万円) (借)繰延消費税額等償却 60,000 / (貸)繰延消費税額等 60,000
③2年目以降の償却(各12万円) (借)繰延消費税額等償却 120,000 / (貸)繰延消費税額等 120,000

なお、勘定科目の名称(繰延消費税額等償却・長期前払費用・租税公課など)は会計ソフトや会社の処理によって異なる場合があります。実際の処理にあたっては、自社の会計方針や顧問税理士の指示に従ってください。

実務上の注意点

交際費の損金不算入額の計算に影響する

税抜経理方式を採用している場合、交際費等に係る控除対象外消費税額等は、交際費等の損金不算入額の計算において交際費等の額に加算する必要があります。具体的には、税抜きの交際費等の合計額に、交際費等にかかる控除対象外消費税額等を加えた金額を「交際費等の額」として、損金不算入額を計算します。控除対象外消費税額等の存在を見落とすと、交際費の損金不算入額の計算を誤るおそれがあるため注意が必要です。交際費に係る控除対象外消費税額等の取扱い|損金不算入額への加算と計算例の記事で別途解説しています。

資産の取得価額に算入する方法も選べる

資産に係る控除対象外消費税額等は、繰延消費税額等として別途資産計上するのではなく、その資産の取得価額に算入する方法も認められています。この場合、控除対象外消費税額等はその資産の減価償却を通じて、耐用年数にわたって損金算入されます。繰延消費税額等として5年で償却するか、取得価額に算入して耐用年数で償却するかは、資産の耐用年数や会社の方針によって有利・不利が変わるため、実務上は検討が必要です。たとえば耐用年数が5年より短い資産なら取得価額算入のほうが早期に費用化でき、5年より長い資産なら繰延消費税額等として5年償却するほうが早く損金化できます。

インボイス制度導入後の経過措置との関係

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者など)からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除の対象外となりました。ただし、一定期間は仕入税額相当額の一定割合(80%・50%)を控除できる経過措置が設けられています。この経過措置により控除できない部分が生じた場合の取扱いについては、消費税経理通達などで別途定められており、通常の控除対象外消費税額等とは取扱いが異なる場合があります。インボイス経過措置で控除できない消費税の処理|控除対象外消費税額等との違いの記事で別途解説しています。

税込経理方式なら控除対象外消費税の管理は不要

控除対象外消費税額等の処理が煩雑なため、課税売上割合が低い事業者(医療法人など)では、あえて税込経理方式を採用して控除対象外消費税の管理を回避するケースもあります。税込経理方式では消費税が取得価額や経費に含まれるため、繰延消費税額等の計算・管理が不要になります。どちらの経理方式が有利かは、事業の状況によって異なります。

想定Q&A集

Q1. 税込経理にすれば控除対象外消費税の処理は不要になりますか

なります。控除対象外消費税額等は税抜経理方式に固有の論点で、税込経理方式では消費税が取得価額や経費に含まれて処理されるため、繰延消費税額等の計算・管理は不要です。課税売上割合が恒常的に低い医療法人などでは、事務負担を避けるためあえて税込経理を選ぶこともあります。ただし税込経理は資産の取得価額が消費税込みで大きくなり、減価償却や少額減価償却資産の判定に影響するため、どちらが有利かは個別に検討が必要です。

Q2. 課税売上割合が95%以上なら控除対象外消費税は絶対に出ませんか

原則は出ませんが、例外があります。第一に、課税売上高が5億円超なら、課税売上割合95%以上でも全額控除はできず控除対象外消費税額等が生じます(ただし全額その期の損金)。第二に、居住用賃貸建物のように課税売上割合と無関係に仕入税額控除そのものが制限される資産では、全額控除できる事業者でも控除対象外消費税額等が生じます。「95%以上だから関係ない」と決めつけず、売上規模と取得資産の種類を確認してください。

Q3. 課税売上割合が80%以上なら、固定資産の控除対象外消費税も全額その期の損金ですか

そのとおりです。3要件は「いずれか1つ」を満たせば全額損金(必要経費)算入できます。課税売上割合80%以上はその1つなので、固定資産にかかる20万円以上の控除対象外消費税でも、課税売上割合が80%以上ならその期に全額損金算入できます。繰延処理が必要になるのは、課税売上割合80%未満かつ固定資産等(棚卸資産以外)かつ一の資産20万円以上、の3条件がすべて重なったときだけです。

Q4. 「20万円未満」は控除対象外消費税の総額で見るのですか

いいえ、一の資産(1つの資産)ごとに判定します。たとえば控除対象外消費税の総額が100万円でも、内訳が「機械A 18万円・備品B 15万円・…」のように個々が20万円未満なら、それぞれ全額その期の損金にできます。逆に、1つの資産で20万円以上のものだけが繰延処理の対象になります。総額で判定しないのがポイントです。

Q5. なぜ取得した年度だけ2分の1しか損金にできないのですか

期の途中で資産を取得することを想定した平準化です。取得年度に12か月分をフルに計上すると、実際には期中の数か月しか保有していないのに1年分を損金にできてしまい過大になります。そこで取得年度は計算額の半分とし、繰り延べた半分を最終(6年目)に回すことで、足かけ6期にわたって合計60か月分が均等に損金算入される設計になっています。減価償却の初年度に似た考え方です。

Q6. 繰延消費税額等を取得価額に算入するのと、5年償却するのはどちらが有利ですか

資産の耐用年数によります。繰延消費税額等として処理すれば5年(60か月)で損金化されます。一方、取得価額に算入するとその資産の耐用年数で減価償却されます。したがって、耐用年数が5年より長い資産(建物など)は繰延消費税額等として5年償却するほうが早く損金化でき、耐用年数が5年より短い資産は取得価額算入のほうが早く損金化できます。早期に損金化したいなら、5年と耐用年数を比べて短いほうを選ぶのが基本です。

Q7. 申告調整だけで損金算入できますか(損金経理は必須ですか)

法人の場合、繰延消費税額等の損金算入は損金経理が要件です。帳簿上で費用(繰延消費税額等償却等)として計上した金額のうち、限度額までが損金になります。決算で経理せず申告調整のみで損金算入することはできません。また確定申告書に損金算入に関する明細書の添付も必要です(施行令139条の5)。なお所得税(個人)では、計算した金額を必要経費に算入します。

Q8. 交際費にかかる控除対象外消費税は、繰延の対象になりますか

交際費は経費であって資産ではないため、繰延(5年償却)の対象にはならず、その期の費用です。ただし注意点があり、税抜経理の場合、交際費等にかかる控除対象外消費税額等は交際費等の損金不算入額の計算上、交際費等の額に加算します。つまり費用処理はその期に行いますが、交際費の限度超過額の判定では消費税分を上乗せして計算する必要があります。見落とすと損金不算入額の計算を誤ります。

Q9. 簡易課税や2割特例を使っている場合も控除対象外消費税は出ますか

簡易課税制度や2割特例は、実際の課税仕入れに関係なく、売上げにかかる消費税からみなしで控除税額を計算する方式です。実際の仮払消費税等と控除税額が一致しないため、両者の差額の処理は生じますが、本記事で説明している原則課税の「控除対象外消費税額等(繰延消費税額等)」の論点とは仕組みが異なります。簡易課税・2割特例適用時の差額の経理処理は、採用している経理方式に応じて別途整理が必要です。

Q10. 居住用賃貸建物の控除対象外消費税も5年償却ですか

居住用賃貸建物は、課税売上割合にかかわらず取得時の仕入税額控除自体が制限される特殊な資産です。税抜経理を採用していれば控除対象外消費税額等が生じ、原則として資産(固定資産=建物)にかかるものとして、3要件に該当しなければ繰延消費税額等として5年償却の対象になります。ただし、その後に課税賃貸用へ転用したり譲渡したりした場合は消費税側の調整計算が入り、法人税・所得税の処理にも影響します。論点が多いため、居住用賃貸建物の記事を参照してください。

まとめ

控除対象外消費税額等は、税抜経理方式を採用する事業者で課税売上割合が低い場合などに発生する、法人税・所得税の所得計算に影響する重要な論点です。重要なポイントを整理します。

この記事のポイント

1. 発生する場合:税抜経理方式を採用(税込経理では発生しない)。課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満

2. 2つの区分:経費に係るものはその期に全額損金算入。資産に係るものは要件により取扱いが分かれる

3. 資産分で全額損金算入できる3要件(いずれか):課税売上割合80%以上/棚卸資産に係るもの/一の資産20万円未満

4. 繰延消費税額等(3要件に非該当):資産計上し5年(60か月)で償却。取得年度は計算額の2分の1が限度。損金経理が要件(施行令139条の5の明細書添付)

5. 実務上の注意点:交際費の損金不算入額の計算に加算が必要/取得価額算入も選択可(耐用年数で有利不利)/居住用賃貸建物・インボイス経過措置との関係に注意

※本記事は2026年6月時点の法令・公表資料(国税庁タックスアンサーNo.6921・No.6917、法人税法施行令139条の5、消費税法等)に基づく一般的な解説です。経理方式の選択や有利判定は個別事情により異なります。実際の処理にあたっては、国税庁の最新情報の確認と、必要に応じて顧問税理士へのご相談をおすすめします。

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