業績悪化改定事由とは?赤字で役員報酬を減額できる条件と否認リスクを解説

法人税

役員報酬(定期同額給与)は、原則として事業年度の途中で金額を変えられません。役員が自らの報酬を操作して利益調整することを防ぐためです。もっとも、経営が著しく悪化したのに高い報酬を払い続けるのは酷であり、一定の場合には期の途中の減額が認められます。その受け皿が業績悪化改定事由です。ただし要件のハードルは高く、単に赤字・資金繰りが苦しいというだけでは認められません。安易に使うと税務調査で否認され、減額前後の差額が損金不算入になります。この記事では、根拠条文と「著しい悪化」の意義、判断の4軸、該当する類型と否認事例、臨時改定事由との切り分け、「減額限定」ゆえの実務論点、立証資料までを、条文・通達・裁決に基づいて整理します。

この記事のポイント

  • 業績悪化改定事由とは、経営状況が著しく悪化したこと等により役員給与をやむを得ず減額する場合の期中改定枠(法人税法施行令69条1項1号ハ、基本通達9-2-13)。増額は対象外の「減額限定」。
  • 明確な数値基準はなく、「やむを得なさ」と「恣意性の排除」という実質で判断される。
  • 国税庁Q&Aの典型は、株主への経営責任・銀行とのリスケ協議・経営改善計画への織り込みの3類型。加えて、主要得意先の不渡りや製品リコール等で将来の著しい悪化が不可避な場合も含まれ得る。
  • 一時的な資金繰り・単なる目標未達・軽微な減益は該当しない。対前年比約6%の減益を理由とした減額を否認した裁決(平成23年1月25日公表)がある。
  • 該当しない減額は、減額後の低い額が定期同額給与とされ、減額前の上乗せ部分が損金不算入になる。
  1. 業績悪化改定事由とは(3つの改定事由と「減額限定」の趣旨)
  2. 根拠条文と判断の4軸(施行令69条1項1号ハ・基通9-2-13)
  3. 該当する4つの類型(国税庁Q&A+将来悪化が不可避)
  4. 該当しない・否認される場合(裁決・税賠事例)
  5. 該当しない減額の損金処理(数値例つき)
  6. 臨時改定事由・定時改定との違い
  7. 「減額限定」ゆえの実務論点(復元・複数回・遡及)
    1. 業績が回復したら元に戻せるか
    2. 期中に複数回減額する場合
    3. 改定前同額・改定後同額の構造
    4. 遡及はできない
  8. 立証・手続・疎明資料
  9. 周辺論点(事前確定届出給与・同族会社・自主返納)
    1. 事前確定届出給与の場合は届出が必要
    2. 同族会社では恣意性を疑われやすい
    3. 自主返納という選択肢
  10. 実務で陥りやすい誤り
  11. 判断フロー(業績悪化改定事由に当たるか)
  12. 想定Q&A(業績悪化改定事由)
    1. Q1. 今期赤字なので役員報酬を期中に下げたい。下げられますか
    2. Q2. 今月の支払いが厳しいので一時的に下げたいのですが
    3. Q3. 数値はまだ悪くないが、主要取引先が不渡りを出し数か月後の売上激減が確実です。今のうちに下げられますか
    4. Q4. 銀行のリスケ協議で役員報酬のカットを求められました。これは該当しますか
    5. Q5. 業績が回復したら、期の途中で元の金額に戻せますか
    6. Q6. 「経営責任」で下げたい。臨時改定事由と業績悪化改定事由のどちらですか
    7. Q7. 期中に2回減額してもよいですか
    8. Q8. どんな資料を残しておけばよいですか
    9. Q9. 同族会社で第三者の関与がありません。それでも認められますか
    10. Q10. 届出は必要ですか
    11. Q11. 減額幅に基準や上限はありますか

業績悪化改定事由とは(3つの改定事由と「減額限定」の趣旨)

定期同額給与は毎月同額であることが原則ですが、次の3つの改定事由に当たる場合は、期の途中で改定しても改定前後それぞれの期間で同額であれば損金算入が認められます。業績悪化改定事由は、このうちの一つです。定期同額給与そのものの原則と例外は定期同額給与とはを参照してください。

改定事由 概要
定時改定 通常改定。事業年度開始の日から原則3か月以内に行う改定
臨時改定事由 役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更など、臨時的な事情による改定(増額・減額いずれも可)
業績悪化改定事由 経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による減額改定(原則として減額に限る)

業績悪化改定事由が着目するのは、役員個人の地位や職務ではなく、会社の経営状況の著しい悪化です。そして認められるのは減額改定に限られ、増額は対象外です。増額が認められないのは、業績悪化を口実にした増額など想定し難いことに加え、業績を理由とする増減は利益調整に使われやすいためです。逆にいえば、減額に限って開かれているのは「下げざるを得ない客観的な事情」がある場面を救うためであり、その本質はやむを得ず減額せざるを得ない事情があるか、恣意性が排除されているかにあります。

根拠条文と判断の4軸(施行令69条1項1号ハ・基通9-2-13)

業績悪化改定事由は、法人税法施行令69条1項1号ハに定められており、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」によりその額を減額した改定(通常改定・臨時改定に該当するものを除く)をいいます。

これを補足するのが法人税基本通達9-2-13です。ここでいう「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況の悪化等によりやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは含まれないと明記されています。該当するかどうかは、役員給与を減額せざるを得ない客観的な事情があるかどうかで判定します。

ヒント:「著しい悪化」は現に数値が悪化している場合に限りません。現状では数値的指標が悪化していなくても、経営改善策を講じなければ今後著しく悪化することが不可避と認められる場合も含まれると解されています。数値そのものより、第三者との関係で減額せざるを得ない客観的事情があるかが要点です。

「どれくらい悪化すれば著しいのか」に明確な数値基準はありません。売上高・経常利益が何%下がれば該当という機械的な線引きはなく、実務では次の4つの軸で実質判断されます。

判断軸 内容
やむを得なさ 減額しなければならない客観的事情があるか(任意の経営判断としての減額ではないか)
非恣意性 利益調整・節税目的ではないか。株主・債権者・取引先など第三者との関係上やむを得ないという構図は恣意性を排除する有力な材料
客観性・疎明可能性 悪化の事実や減額の必要性を客観資料で示せるか
金額の合理性 減額幅が経営状況に照らして合理的か

該当する4つの類型(国税庁Q&A+将来悪化が不可避)

国税庁「役員給与に関するQ&A」では、業績悪化改定事由に該当すると考えられる典型として、第三者である利害関係者との関係上やむを得ず減額するケースが示されています。加えて、現時点で数値が悪化していなくても将来の著しい悪化が不可避なケースも含まれ得ます。

類型 内容
1 株主への経営責任 業績や財務状況の悪化についての経営上の責任から、株主との関係上、役員給与を減額せざるを得ない場合
2 銀行とのリスケ協議 取引銀行との間で行う借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与を減額せざるを得ない場合
3 取引先の信用維持 取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保するため経営改善計画が策定され、これに役員給与の減額が盛り込まれた場合
4 将来の悪化が不可避 主要な得意先が不渡りを出し数か月後の売上激減が避けられない、主力製品の瑕疵でリコール費用や損害賠償の支出が避けられない等、客観的事実の発生により今後の著しい悪化が不可避と認められる場合

1と3はやや抽象的な表現ですが、財務分析による現状把握と、減額を織り込んだ経営改善計画を根拠資料として整えておくことで客観的に説明できます。2のリスケジュール協議は、協議の記録という具体的な行為で裏づけやすい類型です。4は、客観的事実の発生今後の著しい悪化が不可避という2点がそろっているかがポイントになります。

注意点:コロナ禍の弾力運用をそのまま持ち込まない:コロナ禍では、第三者の関与がなくても会社自身が数値的指標の著しい悪化を判断すれば該当し得る、疎明資料も月次決算書等で足りる、といった弾力的な運用が示されました。これはあくまで緊急時の取扱いであり、平時にそのまま及ぶものではありません。平時の判断は本記事の通達9-2-13と役員給与Q&Aに沿って行ってください。

該当しない・否認される場合(裁決・税賠事例)

通達が明示するとおり、次のような減額は業績悪化改定事由に該当せず、損金算入が認められません。

該当しない例 理由
一時的な資金繰りの都合 やむを得ず減額せざるを得ない客観的事情とはいえない(基通9-2-13)
単なる業績目標の未達 予算未達というだけでは足りず、利益調整のための減額と評価される
軽微な減益 「著しい悪化」とはいえない程度の減少
利益調整・節税目的の減額 恣意的な利益調整に当たり定期同額給与の趣旨に反する

代表的な否認例が平成23年1月25日公表裁決です。経常利益が対前年比で約6%減少(対前年94.2%)したことを理由に、代表取締役の定期同額給与を期の途中で減額した事案について、著しい悪化とはいえず業績悪化改定事由に該当しないと判断されました。当該事業年度の売上高はむしろ過去最高水準であったことなども考慮され、減額前の支給額のうち減額後を超える部分が損金不算入とされています。単年度の利益が数%落ちた程度では「著しい悪化」に届かない、という水準感を示す事例です。役員報酬をめぐるその他の否認パターンは役員報酬の否認事例もあわせてご確認ください。

実害の大きさを示す例として、資金繰りの悪化を理由に期中に2回役員給与を減額したものの業績悪化改定事由に該当しないと否認され、1,700万円が損金不算入となって過大納付が生じ、税理士が賠償請求を受けた事例も報告されています。「一時的な資金繰り」では足りないという通達の趣旨を軽視すると、損害が大きくなります。

該当しない減額の損金処理(数値例つき)

業績悪化改定事由に該当しないのに期の途中で減額すると、その事業年度の定期給与は、各支給時期の金額のうち最も少ない額を定期同額給与とみなし、それを超える部分(減額前の高い時期の上乗せ部分)が損金不算入となるのが原則です。つまり「下げた後の安い金額」が基準になり、下げる前に多く払っていた差額が否認されます。

ヒント:例えば月100万円を期の途中で月60万円に減額し、これが業績悪化改定事由に該当しないとされた場合、減額前の各支給月について100万円のうち60万円を超える部分、1月あたり40万円が損金不算入になります。減額して支出を抑えたのに、税務上は否認されて損金が減るという二重の痛手になり得ます。

臨時改定事由・定時改定との違い

3つの改定事由は混同されがちですが、使う場面が異なります。業績悪化改定事由は「経営悪化による減額」、臨時改定事由は「地位や職務の変更による改定(増額も可)」、定時改定は「期首3か月以内の通常改定」です。

項目 定時改定 臨時改定事由 業績悪化改定事由
時期 期首3か月以内 事由の発生時 事由の発生時
方向 増額・減額 増額・減額 原則減額のみ
着目点 通常の改定 役員個人の地位・職務の変動 会社の経営状況の著しい悪化
立証の中心 改定時期 地位・職務がどう変わったかの証跡 著しい悪化の事実+減額せざるを得ない外部関係

迷ったときの整理軸は、減額の原因が、会社全体の業績にあるのか、役員個人の地位・職務にあるのかです。会社の業績が著しく悪化し、株主・銀行等との関係でやむを得ず下げる場合は業績悪化改定事由、役員が降格した・病気で職務を担えない・職務が縮小した場合は臨時改定事由です。臨時改定事由の詳細は臨時改定事由とはを、改定時期の原則は役員報酬の変更はいつまで(3ヶ月ルール)を参照してください。

ヒント:「経営責任で下げる」という言葉は両事由にまたがり得るので注意が必要です。会社の業績悪化に対する経営責任としての減額は業績悪化改定事由の射程、役員個人の不祥事に対する一定期間の減額は臨時改定事由に類するもの、というように、減額の実質的な原因で切り分けます。

「減額限定」ゆえの実務論点(復元・複数回・遡及)

業績が回復したら元に戻せるか

業績悪化改定事由は減額に限られるため、これを根拠に「回復後の増額(復元)」を行うことはできません。回復後に元の水準へ戻したい場合は、原則として翌期の通常改定(期首3か月以内)で行うか、別途、臨時改定事由(地位・職務の変動)に当たる事情があるかを検討します。「下げたら年度内に戻すのは難しい」という前提で、減額のタイミングと水準を設計しておくことが大切です。

期中に複数回減額する場合

業績がさらに悪化しての2回目の減額は理論上あり得ますが、各回それぞれに業績悪化改定事由が必要であり、各区間で支給額が同額になっている必要があります。前述の税賠事例のように、資金繰りを理由に安易に複数回下げると否認リスクが高まります。

改定前同額・改定後同額の構造

判定の枠組みは臨時改定と同じです。事業年度開始から改定までの各支給時期で同額、改定後から年度末までの各支給時期で同額であれば、改定前・改定後それぞれが定期同額給与として扱われます。

遡及はできない

悪化の事実が客観的に固まった時点で速やかに決議し、その後の支給時期から適用するのが原則です。事由発生から何か月も経ってからの減額や、遡及的な減額は、必要性に疑問を持たれやすく、判定上も問題となります。

立証・手続・疎明資料

業績悪化改定事由は「客観的な事情」で判断されるため、税務調査に耐えるには、減額の理由と経緯を裏づける資料を整えておくことが不可欠です。役員報酬の改定は株主総会の決議事項であり(個別額の決定を取締役会等へ委任している場合はその記録も)、議事録には、どのような経営状況の悪化により、なぜ減額がやむを得ないのかを具体的に記載しておきます。

場面 整えておきたい客観資料
株主への経営責任 財務分析資料、株主説明資料、減額の経緯を記載した株主総会・取締役会議事録
銀行とのリスケ リスケジュールの協議記録、金融機関への提出資料、返済計画表
取引先の信用維持 役員給与の減額が明記された経営改善計画、策定の経緯資料
将来の悪化が不可避 主要得意先の不渡り、製品瑕疵・リコール・損害賠償見込みを示す客観資料
共通 月次決算書・試算表(売上・利益の推移)、資金繰り表

株主・債権者・取引先といった第三者との関係上やむを得ないという構図は、恣意性を排除する有力な材料です。第三者の関与がない自主的な減額(オーナー企業の自己判断)の場合は、悪化の事実と減額の必要性をより丁寧に客観資料で裏づける必要があります。あわせて、減額幅が経営状況に照らして合理的か、なぜその金額まで下げたのかを説明できるようにしておきます。

周辺論点(事前確定届出給与・同族会社・自主返納)

事前確定届出給与の場合は届出が必要

ここまでは定期同額給与を前提としています。定期同額給与の減額改定であれば税務署への届出は不要ですが、賞与的な事前確定届出給与を業績悪化に伴い減額・不支給とする場合は、変更届出(または取りやめ)の手続が必要です。どちらの制度の話かを取り違えないよう注意してください。

同族会社では恣意性を疑われやすい

株主が少数で役員の一部がその株主でもある同族会社では、「身内で都合よく下げただけではないか」と恣意性を疑われやすいため、第三者との関係や客観資料による裏づけが一層重要になります。

自主返納という選択肢

業績悪化改定事由に当たらないが減額の効果を得たい場合、いったん支給した役員報酬を役員が自主的に返納する方法が検討されることもあります。ただし税務上の扱いは別途整理が必要なため、安易な代替手段とせず専門家に確認してください。

実務で陥りやすい誤り

注意点:赤字だから下げれば認められると考える:単に赤字である、資金繰りが苦しいというだけでは業績悪化改定事由に該当しません。第三者である利害関係者との関係で減額せざるを得ない客観的事情と、それを裏づける資料がないと、減額分が損金不算入になります。

注意点:数%の減益で減額してしまう:経常利益が対前年比で数%減少した程度では「著しい悪化」に届かず、否認された裁決があります(平成23年1月25日公表、経常利益約6%減を否認)。減益の程度と、減額せざるを得ない事情の有無を慎重に見極める必要があります。

注意点:一度下げてすぐ元に戻す:業績悪化を理由に減額した後、短期間で元の水準に戻すと、当初の減額が一時的な資金繰りや利益調整であったと評価されるおそれがあります。減額改定は、その後の支給が改定後の額で定期同額であることが前提です。

注意点:議事録に理由を残さない:減額の事実だけを決議し、なぜ減額せざるを得なかったのかを議事録や計画書に残していないと、後日の税務調査で客観的事情を説明できません。減額の理由・経緯を文書で残すことが立証の要です。

判断フロー(業績悪化改定事由に当たるか)

手順 判断内容
1 期首3か月以内の改定か。該当すれば通常改定で処理(増減自由)
2 該当しない場合、減額か増額か。増額なら業績悪化改定事由は使えず、臨時改定事由(地位・職務の変動)に当たるか検討
3 減額の原因が会社の経営状況の著しい悪化で、やむを得ず下げざるを得ないなら業績悪化改定事由を検討
4 減額の原因が役員個人の地位・職務の変動なら臨時改定事由を検討
5 一時的な資金繰り・単なる目標未達・利益調整目的なら、定期同額給与としての損金算入は困難
6 4つの軸(やむを得なさ・非恣意性・客観性・金額の合理性)で点検
7 決議・議事録・疎明資料を整備し、各区間で同額になるよう設計。復元は翌期通常改定等で

想定Q&A(業績悪化改定事由)

Q1. 今期赤字なので役員報酬を期中に下げたい。下げられますか

「赤字だから」というだけでは足りません。経営状況が著しく悪化し、株主・銀行・取引先との関係などでやむを得ず減額せざるを得ない客観的事情があるかが問われます。単なる減益や予算未達は該当しません。

Q2. 今月の支払いが厳しいので一時的に下げたいのですが

一時的な資金繰りの都合は、通達上、業績悪化改定事由に含まれないとされています。これだけを理由とする減額は否認リスクが高く、減額分が損金不算入になるおそれがあります。

Q3. 数値はまだ悪くないが、主要取引先が不渡りを出し数か月後の売上激減が確実です。今のうちに下げられますか

客観的事実(不渡り等)が発生し、今後の著しい悪化が不可避と認められる場合は、現時点で数値が悪化していなくても該当し得ます。不渡りの事実や売上への影響を示す資料を備えておきましょう。

Q4. 銀行のリスケ協議で役員報酬のカットを求められました。これは該当しますか

取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議の中で役員給与を減額せざるを得ない場合は、国税庁の例示に当たり、通常は業績悪化改定事由に該当すると考えられます。協議の記録や返済計画を資料として残しておきます。

Q5. 業績が回復したら、期の途中で元の金額に戻せますか

業績悪化改定事由は減額に限られるため、これを根拠に期中で増額(復元)することはできません。原則は翌期の通常改定で戻すか、別途、臨時改定事由に当たる事情があるかを検討します。

Q6. 「経営責任」で下げたい。臨時改定事由と業績悪化改定事由のどちらですか

減額の実質的な原因で切り分けます。会社の業績悪化に対する経営責任なら業績悪化改定事由、役員個人の不祥事に対する一定期間の減額なら臨時改定事由に類するもの、という整理が基本です。

Q7. 期中に2回減額してもよいですか

さらに悪化した場合の2回目の減額はあり得ますが、各回に業績悪化改定事由が必要で、各区間で同額になっている必要があります。資金繰りを理由に安易に複数回下げると否認された事例があり、注意が必要です。

Q8. どんな資料を残しておけばよいですか

月次決算書・資金繰り表のほか、リスケ協議の記録、経営改善計画書、株主への説明資料など、「著しい悪化」と「減額のやむを得なさ」を客観的に示せる資料を整えます。議事録に減額理由を具体的に書くことも重要です。

Q9. 同族会社で第三者の関与がありません。それでも認められますか

第三者の関与は恣意性を排除する有力な要素ですが、必須とまではされていません。ただし第三者がいない分、悪化の事実と減額の必要性をより厳格に客観資料で裏づける必要があります。

Q10. 届出は必要ですか

定期同額給与の減額改定であれば、税務署への届出は不要です。ただし会社法上の決議と議事録の作成・保存は必要です。なお、事前確定届出給与を減額・不支給にする場合は変更届出等の手続が必要です。

Q11. 減額幅に基準や上限はありますか

法令上の数値基準はありませんが、減額幅は経営状況に照らして合理的であることが求められます。状況に比して不自然に大きい減額は、恣意性を疑われる余地があります。

まとめ

  • 業績悪化改定事由は、経営状況が著しく悪化したこと等による役員報酬の減額改定を認める事由(施行令69条1項1号ハ、基通9-2-13)。増額は対象外の「減額限定」。
  • 明確な数値基準はなく、「やむを得なさ」と「恣意性の排除」で実質判断。判断は4つの軸(やむを得なさ・非恣意性・客観性・金額の合理性)で点検する。
  • 国税庁Q&Aの典型は、株主への経営責任・銀行とのリスケ協議・経営改善計画への織り込みの3類型。主要得意先の不渡りや製品リコール等で将来の悪化が不可避なケースも含まれ得る。
  • 一時的な資金繰り・単なる目標未達・軽微な減益は該当せず、経常利益約6%減を否認した裁決がある。該当しない減額は減額前の上乗せ部分が損金不算入になる。
  • 減額の理由と経緯を計画・議事録・疎明資料で残し、立証できるようにしておく。減額限定ゆえ、復元は翌期通常改定等で別途検討する。

出典・参考(条文・通達・裁決)

※本記事は令和8年8月時点の法令・通達・国税庁公表資料・公表裁決(法人税法34条、法人税法施行令69条、法人税基本通達9-2-13、国税庁「役員給与に関するQ&A」、平成23年1月25日公表裁決)に基づく一般的な解説です。コロナ禍の弾力的運用に関する記載は当時の取扱いで、現在の平時にそのまま適用されるものではありません。個別の判定は事実関係により異なるため、具体的な適用は顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。

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