消費税のリバースチャージ方式とは|特定課税仕入れ・経過措置・仕訳を実務解説

消費税

消費税は本来、売り手である事業者が売上に係る消費税を申告・納付します。ところが国外事業者がインターネット経由で日本の事業者にサービスを提供する取引では、国外の売り手に日本の消費税を適切に申告させることが難しいため、納税義務を売り手から買い手へ転換する仕組みが設けられています。これがリバースチャージ方式です。いわば「サービスの輸入消費税」を、受け取った国内事業者自身が申告する制度で、対象は事業者向け電気通信利用役務の提供と特定役務の提供に限られます。この記事では、国税庁No.6118を軸に、対象取引・特定課税仕入れの範囲・経過措置による申告要否・仕訳と計算・令和7年開始のプラットフォーム課税との違いまで、実務目線で整理します。

この記事のポイント

  • リバースチャージ方式は、国外事業者に代わり役務の提供を受けた国内事業者が消費税を申告・納付する制度。
  • 対象は「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「特定役務の提供」で、これらを特定課税仕入れという。
  • 経過措置により、実際に申告が必要なのは一般課税かつ課税売上割合95%未満の事業者に限られる。
  • 課税売上割合95%以上の課税期間・簡易課税・2割特例の適用期間は「なかったものとされ」申告不要。
  • リバースチャージの仕入税額控除にインボイスは不要で、一定事項を記載した帳簿の保存で足りる。

リバースチャージ方式とは?導入の趣旨

リバースチャージ方式とは、役務の提供を行った国外事業者に代わって、その役務の提供を受けた国内事業者が、当該取引に係る消費税を申告・納付する課税方式をいいます。英語の「reverse(逆)」「charge(請求・課税)」のとおり、本来の納税義務者を逆転させる仕組みです。

背景には、電子書籍・音楽・広告配信などインターネットを介したサービス(電気通信利用役務の提供)が国境を越えて行われるようになり、国内事業者が国内から提供する場合と、国外事業者が国外から提供する場合とで課税上のバランスが崩れていた問題があります。平成27年10月以後、これらの役務は提供者の所在地でなく役務の提供を受ける者の住所地等で国内取引かを判定することになり、国外からの提供でも国内取引として課税されることになりました。その申告・納税を、国外の売り手ではなく国内の買い手が担うのがリバースチャージ方式です。

ヒント:リバースチャージは「サービスを輸入した」とイメージすると理解しやすい制度です。輸入した課税仕入れについて、買い手が自分で売上側の消費税(仮受)を立て、同時に仕入税額控除(仮払)を行うため、控除が全額できる場合は差引ゼロになります。

対象となる2つの取引と特定課税仕入れ

リバースチャージ方式の対象は、国外事業者から受けた次の2つの取引に限られます。これらをまとめて特定課税仕入れといいます。消費税法上、電気通信利用役務の提供は「事業者向け」と「消費者向け」に区分され、リバースチャージの対象になるのは前者だけである点が判定の要です。

対象取引 意味 具体例
事業者向け電気通信利用役務の提供 国外事業者が行う電気通信利用役務のうち、役務の性質や取引条件から受け手が通常事業者に限られるもの ネット広告の配信、事業者向けクラウド、アプリ等の販売の場の提供
特定役務の提供 国外事業者が国内で行う芸能・スポーツ等の役務のうち、他の事業者に対して行うもの 海外アーティスト・スポーツ選手の国内公演等の対価

「電気通信利用役務の提供」とは、電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供をいい、電子書籍・音楽・映像・ソフトウェア(アプリを含む)の配信、クラウドサービスなどが該当します。ただし、他の資産の譲渡等に付随して行われるものや、単なる通信そのもの、電話・FAX等の役務は除かれます。

注意点:取引相手が本当に国外事業者か確認していない:例えばGoogle広告は2019年4月以降、日本国内のGoogle合同会社との契約となり国内取引に該当するため、リバースチャージの対象になりません。契約主体が国内法人か国外事業者かを確認しないと、国内取引を誤ってリバースチャージ処理してしまいます。

誰が申告するのか?経過措置による申告要否

特定課税仕入れがあっても、すべての事業者が実際にリバースチャージの申告を行うわけではありません。当分の間の経過措置により、対象となるのは一般課税で申告する事業者のうち、その課税期間の課税売上割合が95%未満のものに限られます。以下に該当する場合は、特定課税仕入れは「なかったものとされ」、申告・納税義務がなく、その分の仕入税額控除もできません。

事業者の状況 リバースチャージ申告 根拠
一般課税かつ課税売上割合95%未満 必要 原則どおり課税
一般課税かつ課税売上割合95%以上 不要 経過措置(なかったものとされる)
簡易課税制度を適用 不要 経過措置(なかったものとされる)
2割特例を適用 不要 なかったものとされる
免税事業者 不要 確定申告義務がない

つまり、実務でリバースチャージの申告が現実に問題になるのは、不動産賃貸業(住宅家賃の非課税売上が多い)や医療機関のように、課税売上割合が95%未満になりやすい一般課税の事業者です。土地の売却などで一時的に課税売上割合が95%未満に落ちた年に、特定課税仕入れがあると申告が必要になる点にも注意します。課税売上割合の計算は課税売上割合とは|計算方法・95%ルール・有価証券で解説しています。

注意点:「うちは関係ない」と経過措置を過信する:経過措置は「当分の間」の措置であり、恒久的なものではありません。また、課税売上割合は年によって変動し、95%以上と思っていた事業者が非課税売上の増加で95%未満に落ちる年があります。特定課税仕入れの有無は毎期確認すべきです。

消費者向け役務・プラットフォーム課税との違い

国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、事業者向けでないもの(広く消費者も対象とするもの)は「消費者向け電気通信利用役務の提供」に区分され、リバースチャージの対象外です。この場合は原則として国外事業者側が申告・納税します。さらに令和7年4月1日以後は、アプリストア等を通じた一定の取引について、国税庁長官の指定を受けた特定プラットフォーム事業者が申告・納税を行うプラットフォーム課税が導入されました。3つの整理を比較します。

区分 申告・納税する者 仕入税額控除の要件
事業者向け(リバースチャージ) 役務を受けた国内事業者 インボイス不要・帳簿保存のみ
消費者向け(原則) 国外事業者 登録国外事業者等のインボイス保存
プラットフォーム課税(令和7年4月〜) 特定プラットフォーム事業者 PF事業者のインボイス保存

言い切ると、納税義務者を買い手に転換するのがリバースチャージ、プラットフォーム事業者に集約するのがプラットフォーム課税で、両者は別制度です。リバースチャージはあくまで「事業者向け」の役務に限られ、消費者向けやプラットフォーム課税の対象取引には適用されません。

仕訳と納税額の計算

リバースチャージでは、支払った対価に消費税は含まれていない(税抜)ものとして扱い、買い手が自ら売上側の消費税(仮受)を立てると同時に、課税仕入れとして仕入税額控除(仮払)を行います。国外事業者へ11,000円相当のネット広告料(税抜相当)を支払い、その課税期間の課税売上割合が90%のケースで示します。

支払時の仕訳

借方 金額 貸方 金額
広告宣伝費 11,000 現預金 11,000
仮払消費税 1,100 仮受消費税 1,100

支払対価11,000円に対し、リバースチャージにより仮受消費税1,100円(売上側)と仮払消費税1,100円(仕入側)を同額計上します。会計ソフトでは特定課税仕入れ用の税区分コードを入力して自動処理するのが一般的です。

決算時の精算(課税売上割合90%の場合)

仮受消費税1,100円は全額が納税額の計算に入る一方、仮払消費税は課税売上割合90%で按分され、控除できるのは1,100円×90%=990円です。差額110円が納付すべき消費税となり、仮払と控除額の差額(1,100円−990円=110円)は雑損失等で処理します。

項目 金額
仮受消費税(課税標準に算入) 1,100円
控除できる仕入税額(1,100×90%) 990円
差引納付額 110円

課税売上割合が95%以上なら仮受と仮払が同額控除で差引ゼロですが(経過措置で申告自体が不要)、95%未満だと控除しきれない差額が実際の納税負担として残ります。按分の方法は個別対応方式と一括比例配分方式を参照してください。

インボイス・帳簿保存要件

リバースチャージにより申告・納税する消費税額は仕入税額控除の対象になりますが、その適用に適格請求書(インボイス)の保存は不要で、一定事項を記載した帳簿の保存だけで控除できます。買い手自身が納税義務者となる取引の性質上、売り手からのインボイスを前提としないためです。一方、消費者向け電気通信利用役務の提供について仕入税額控除を受けるには、登録国外事業者等から交付されたインボイスの保存が必要です。

ヒント:事業者向け電気通信利用役務の提供を行う国外事業者には、あらかじめ「この取引はリバースチャージ方式の対象であり、役務の提供を受ける事業者に納税義務がある」旨を表示する義務が課されています。取引先のパンフレットや契約条件にこの表示があるかも、該当性判断の手がかりになります。

インボイス制度全体の枠組みはインボイス制度とは?で解説しています。

判断フロー(リバースチャージの該当性)

ある取引がリバースチャージの申告対象かは、次の順序で判定します。上から順にあてはめれば、実際に申告が必要かどうかまで確認できます。

順序 判定内容 当てはまらない場合
1 相手は国外事業者か(契約主体が国内法人でないか) 国内取引で対象外
2 事業者向け電気通信利用役務または特定役務か 消費者向け等で対象外
3 一般課税で申告しているか 簡易課税・免税は申告不要
4 課税売上割合が95%未満か 95%以上は申告不要
5 1〜4をすべて満たす リバースチャージ申告が必要

想定Q&A(リバースチャージ)

Q1. リバースチャージ方式とは一言でいうと何ですか

結論として、国外事業者の代わりに国内の買い手が消費税を申告・納付する方式です。理由は、国外事業者に日本の消費税を適切に申告させることが困難なためです。反対事例として、相手が国内法人であれば通常どおり売り手が申告するので、リバースチャージにはなりません。

Q2. どんな取引が対象になりますか

結論として、国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「特定役務の提供」の2つです。理由は、これらが特定課税仕入れとして買い手に納税義務が課されるためです。反対事例として、消費者向けの電子書籍・音楽配信は対象外で、国外事業者側が申告します。

Q3. 課税売上割合が95%以上なら申告は必要ですか

結論として、必要ありません。理由は、経過措置により課税売上割合95%以上の課税期間は特定課税仕入れがなかったものとされるためです。反対事例として、同じ事業者でも土地の売却等で課税売上割合が95%未満に落ちた年は申告が必要になります。

Q4. 簡易課税の事業者はどうなりますか

結論として、リバースチャージの申告は不要です。理由は、簡易課税制度が適用される課税期間も特定課税仕入れがなかったものとされるためです。反対事例として、簡易課税をやめて一般課税に戻り、かつ課税売上割合が95%未満になれば申告が必要になります。簡易課税の詳細は消費税の簡易課税制度を完全解説を参照してください。

Q5. 免税事業者や2割特例の場合はどうですか

結論として、いずれも申告不要です。理由は、免税事業者は確定申告義務がなく、2割特例の適用期間も特定課税仕入れがなかったものとされるためです。反対事例として、免税事業者がインボイス登録して一般課税の課税事業者になり、課税売上割合が95%未満なら申告対象になり得ます。

Q6. Google広告やクラウドサービスは対象ですか

結論として、契約相手が国外事業者かで変わります。理由は、リバースチャージは国外事業者との取引に限られるためです。反対事例として、Google広告は2019年4月以降、国内のGoogle合同会社との契約となっており国内取引に該当するため、リバースチャージの対象になりません。契約主体の所在を必ず確認します。

Q7. リバースチャージの仕入税額控除にインボイスは必要ですか

結論として、必要ありません。理由は、買い手自身が納税義務者となる取引のため、一定事項を記載した帳簿の保存で控除が認められるからです。反対事例として、消費者向け電気通信利用役務の提供では、登録国外事業者等からのインボイス保存が控除の要件になります。

Q8. プラットフォーム課税とは何が違いますか

結論として、納税義務者が異なります。理由は、リバースチャージが買い手に納税義務を移すのに対し、プラットフォーム課税は特定プラットフォーム事業者に納税義務を集約する制度だからです。反対事例として、事業者向け役務はリバースチャージ、アプリストア等を介した一定の消費者向け取引はプラットフォーム課税と、対象が分かれます。

Q9. 支払った金額に消費税は含まれていますか

結論として、含まれていない前提で処理します。理由は、リバースチャージでは買い手が納税義務者となるため、支払対価の額には消費税相当額が含まれないものとして課税標準を計算するからです。反対事例として、消費者向け取引では請求額に消費税が含まれており、この点が異なります。

Q10. 申告を忘れるとどうなりますか

結論として、消費税の計上漏れとして修正申告や加算税・延滞税の対象になり得ます。理由は、対象事業者にとって特定課税仕入れの申告は義務だからです。反対事例として、課税売上割合95%以上や簡易課税などで「なかったものとされる」ケースでは、そもそも申告義務がないため計上漏れにはなりません。自社がどちらかを毎期確認することが重要です。

Q11. 対象かどうかの見分け方はありますか

結論として、国外事業者側の表示を確認するのが有効です。理由は、事業者向け電気通信利用役務を行う国外事業者には、リバースチャージ対象である旨を事前に表示する義務があるためです。反対事例として、表示がなくても要件に合致すれば納税義務は生じるので、表示の有無だけに頼らず取引実態で判定します。

まとめ

  • リバースチャージは、国外事業者に代わり国内の買い手が消費税を申告・納付する制度。
  • 対象は事業者向け電気通信利用役務の提供と特定役務の提供(特定課税仕入れ)に限られる。
  • 経過措置で、実際の申告は一般課税かつ課税売上割合95%未満の事業者だけ。95%以上・簡易課税・2割特例・免税は不要。
  • 仕訳は仮受・仮払消費税を同額計上し、95%未満では控除しきれない差額が納税負担として残る。
  • 控除にインボイスは不要で帳簿保存のみ。消費者向けやプラットフォーム課税とは別制度。

リバースチャージ方式は「国外事業者からのサービスの輸入消費税を、受け取った国内事業者が自分で申告する」制度です。対象は事業者向け電気通信利用役務の提供と特定役務の提供に限られ、実際に申告が必要なのは一般課税かつ課税売上割合95%未満の事業者だけです。自社が申告対象かを毎期の課税売上割合で確認し、対象年には仮受・仮払消費税の計上と帳簿保存を正しく行うことが実務上のポイントになります。

出典・参考(2026年8月時点)

※本記事は令和8年(2026年)8月時点の法令等に基づく一般的な解説です。取引の該当性や申告要否は、契約内容・課税売上割合・課税方式により異なります。実際の申告・判断にあたっては、必ず国税庁ホームページや税務署、顧問税理士にご確認ください。

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