繰越欠損金とは|10年繰越・中小の全額控除と繰戻し還付を解説

法人税

会社が赤字(欠損)になった年の損失は、その年で終わりではありません。青色申告をしていれば、その赤字を最大10年間繰り越し、将来黒字になった年の所得から差し引いて法人税を軽減できます。これが繰越欠損金(青色欠損金の繰越控除)です。さらに、前期が黒字だった場合には、当期の赤字を前期に繰り戻して法人税の還付を受ける「繰戻し還付」も選べます。

この記事では、繰越欠損金について、国税庁No.5762・法人税法57条をもとに、繰越期間・控除限度額・中小法人の全額控除・繰戻し還付の仕組みと、誤解しやすいポイントを解説します。

この記事のポイント
  • 青色申告をしていれば、欠損金を最大10年間繰り越せる
  • 中小法人等は所得の全額(100%)を繰越欠損金で控除できる
  • 資本金1億円超の大法人などは、控除できるのは所得の50%まで
  • 控除は古い年度の欠損金から順に行う
  • 中小法人等は、当期の赤字を前期に繰り戻して法人税の還付を受けられる(繰戻し還付)

繰越欠損金とは

繰越欠損金とは、ある事業年度に生じた税務上の赤字(欠損金額)を、翌年度以降に繰り越し、黒字の年の所得金額から差し引ける制度です。赤字の年と黒字の年をならして課税できるため、年度による業績の波がある会社にとって重要な仕組みです。

利用するための大前提は、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していることです。白色申告では、原則として欠損金の繰越しはできません(災害損失金など一部の例外を除く)。さらに、その後も連続して確定申告書を提出していることが必要です。

繰越欠損金を使えるかどうかは、まず青色申告をしているかにかかっています。設立直後や赤字が見込まれる会社は、早めに青色申告の承認申請を出しておくことが重要です(設立時は原則として設立日から3か月以内などの期限があります)。

繰越期間は最大10年

繰越欠損金の繰越期間は、現行では最大10年です。各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度に生じた欠損金が、繰越控除の対象になります。10年を過ぎて使いきれなかった欠損金は、切り捨てられて使えなくなります。

この10年という期間は、もともと9年でした。平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に生じた欠損金から10年に延長された経緯があります。したがって、それより前に生じた古い欠損金は繰越期間が9年である点に注意が必要です。古い欠損金ほど期限切れが近いため、使い忘れに注意しましょう。

欠損金が生じた事業年度 繰越期間
平成30年4月1日以後開始 10年
それより前に開始 9年

控除限度額:中小法人は全額、大法人は50%

繰越欠損金で控除できる金額には、法人の規模によって上限があります。ここが大法人と中小法人で大きく異なるポイントです。

区分 控除限度額
中小法人等 控除前所得の全額(100%)
大法人(資本金1億円超等) 控除前所得の50%

中小法人等(資本金1億円以下で、資本金5億円以上の大法人の100%子会社等を除く法人)は、繰越欠損金で所得の全額を控除できます。当期の所得を上回る欠損金がある場合は、所得をゼロにするまで控除し、控除しきれない分を翌期以降に繰り越します。一方、資本金1億円超の大法人などは、控除できるのは所得の50%までで、残り50%には課税されます。

控除には順序があります。古い年度の欠損金から先に控除し、使いきれなかった分を翌期以降に繰り越します。古い欠損金から使うことで、繰越期限切れによる切捨てを防ぐ仕組みです。

控除の計算例

中小法人で、当期の控除前所得が1,000万円、繰越欠損金が2,000万円ある場合を考えます。中小法人は全額控除できますが、控除できるのは当期所得の範囲内のため、当期は1,000万円を控除して所得をゼロにします。控除しきれなかった1,000万円は、翌期以降に繰り越して控除します。

項目 金額
控除前所得 1,000万円
繰越欠損金(残高) 2,000万円
当期の控除額 1,000万円(所得が限度)
翌期以降への繰越 1,000万円

欠損金の繰戻し還付

繰越欠損金が「赤字を将来に繰り越す」制度であるのに対し、繰戻し還付は「赤字を前期に繰り戻す」制度です。青色申告書を提出する事業年度に欠損金が生じた場合、その欠損金を、開始の日前1年以内に開始した事業年度(前期)の所得に繰り戻し、前期に納付した法人税の一部または全部の還付を請求できます。

たとえば、前期の所得100万円・納付法人税15万円で、当期に100万円の欠損金が生じた場合、前期に納めた法人税15万円が還付されます。前期が黒字で法人税を納め、当期が赤字になった会社が、前期の法人税を取り戻すイメージです。

還付金額 = 前期の法人税額 × (当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額)

繰戻し還付の注意点

繰戻し還付には、いくつか注意点があります。第一に、原則として中小法人等が利用できる制度です(大法人は一定の場合を除き適用が停止されています)。第二に、還付されるのは法人税(および地方法人税)であって、法人住民税・法人事業税といった地方税は還付されません。第三に、繰り戻せるのは前1年以内に開始した事業年度に限られます。前期に納めた法人税があり、当期に赤字が出た中小法人にとっては、資金を早期に回収できる有効な選択肢です。

繰戻し還付(前期に戻して今すぐ還付を受ける)と繰越控除(将来の黒字と相殺する)のどちらが有利かは、今後の業績見通しによります。すぐ資金が欲しい・翌期以降も黒字が見込みにくいなら繰戻し還付、翌期以降に十分な黒字が見込めるなら繰越控除、というのが基本的な考え方です。

まとめ

繰越欠損金は、青色申告をしていれば赤字を最大10年間繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税を軽減できる制度です。中小法人等は所得の全額を控除でき、大法人は50%が限度です。控除は古い欠損金から順に行い、期限切れに注意が必要です。さらに、当期の赤字を前期に繰り戻して法人税の還付を受ける繰戻し還付も、中小法人等なら選べます。青色申告の継続と、繰越欠損金の残高・期限の管理が、これらの制度を活かす前提になります。

この記事のまとめ
  • 青色申告で欠損金を最大10年繰越(平成30年4月前開始分は9年)
  • 中小法人等は所得の全額控除、大法人は50%が限度
  • 控除は古い欠損金から順に。期限切れに注意
  • 繰戻し還付は中小法人等が利用可。前1年に繰り戻して法人税を還付
  • 還付されるのは法人税等のみで、住民税・事業税は還付されない

※本記事は作成時点の法令・公表資料(法人税法57条・80条、国税庁タックスアンサーNo.5762・No.5763等)に基づいています。個別の取扱いは事実関係により異なる場合があるため、具体的な判断は最新の条文・通達の確認、または税理士へのご相談をおすすめします。

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